ジャズ喫茶ベイシーの音の秘密~ハイレゾ時代のスピーカー選び

 ベイシーとは岩手県一関市にあるジャズ喫茶。スピーカーの構成は15″ウーファー(JBL 2220B)2発を密閉箱に入れ、中高域にホーンを使ったもの。能率は103~104dBと推測される。良い音を得るために能率が重要なファクターであることをベイシーのシステムが教えている。

 

ベイシーのスピーカーシステム

 密閉箱の容積は1kL近い巨大なものらしい。低域再生限界は計算上50Hzだがそれ以下もダラ下がりに伸びていると見られる。

 バスレフポートから出る音には遅れがあるが、密閉箱では共鳴による遅れが原理的にない。下から上まで共鳴に一切頼らず、能率100dBOverを達成したシステムは、おそらくここ以外に無い。過渡応答を最高にできる解の一つである。

 私はベイシーに行ったことが無いが、このようなシステムから出てくる音は想像できる。以前書いた高能率スピーカーの特徴[1]が最高レベルで聞けるはずだ。

 

能率は90dBで十分?

 市販されているスピーカーの能率は、昔から90dB前後のものが多い。そのため、ほとんどの人がこの能率の音しか聴いたことがない。

「能率が低くてもパワーを入れれば同じこと」

そんな考えの人も多いようだ。能率が低いスピーカーでは良質な大音量再生が期待できない。そこで、能率別にランクを規定してみた。高能率SPの音に少しでも興味ある人は、ぜひ参考にして欲しい。

 

能率別のスピーカーランク(当館独自)

 

クラスS

 15″ウーファー×2を十分大きな密閉箱に入れて100dBを超える能率を達成したもの。ベイシーのシステム。全ての音域を共鳴に頼らないで出す。過渡応答を損なわずに十分な低音を出せる。

クラスA 

 15″ウーファー×2をバスレフの箱に入れて100dBを超える能率を達成したもの。ローエンドは共鳴で伸ばした低域なので過渡応答はクラスSより劣るが、箱の体積がクラスSの半分以下で済む。シネマ用のJBL 4722N、3722Nが該当する。

JBL 4722Nと3722Nのカタログ写真左はJBL 4722N、3722N(JBL2015カタログより)。ベイシーのシステムに一番近いのがこれ。受注生産で価格はペア60~80万円。

 インピーダンス4オーム、能率はなんと104dB。アンプは数ワットで事足りるので選択が難しい。

 

クラスB

 15″ウーファー×2をバスレフの箱に入れて90dB後半~100dBの能率を達成したもの。レイオーディオのRMシリーズやJBLのエベレストが該当する。個人消費者に縁のない価格(600万円~)とサイズ。

クラスC

 12″以上のウーファーにホーンを組み合わせたSR用スピーカー。軽いコーンを使って高能率のまま小型化したもので能率100dB前後の商品を手ごろな価格で入手できる。ヤマハS112VCBR12はホームユースに使える候補[2]

 このタイプは低音があまり出ないのでサブウーファーと組み合わせることが望ましい。この場合、出来るだけ口径が大きく、パワーが入るもの(500W以上)の商品を組み合わせたい[2]

クラスD

 15″ウーファーにホーンを組み合わせた大型システム。クラスBを小型化して一般家庭に導入しやすいサイズにしたもの。ウーファーの振動系が重くなって能率は95dB前後に落ちる。昔からJBLがこのクラスの商品を多く作っている。我が家のJBL S3100はこれに相当。2018年の現行機ではS4700がこれに相当する。

クラスE

 中高域にホーンを使って能率90dB前半を達成している小型スピーカー。クリプシュ[5]やサウンドハウスのCLASSIC PROシリーズがある。低域はクラスCと同様サブウーファーと組み合わせて補う。

 限られたスペースに設置するミニシステム、ミニホームシアターに好適。当館ではCLASSIC PRO CSP6 にサブウーファーを組み合わせている[3]

クラスF

 能率90dBに満たないスピーカーすべて。ハイレゾ対応と称する高級スピーカもここに入る[4]。小音量専門。少しでも音量を上げると歪が増えてしまってまともな音が出ない。

 

 

オーディオ機器のボトルネックは今もスピーカー

 ベイシーのソースはアナログレコードという。アナログレコードでこれだけいい音が聴ける。ということは、今でもオーディオのボトルネックが音源(ソース)ではなくスピーカーにあることを示している。

 そのソースをハイレゾに替えたところで、違いが見えないのは当然のこと。今のスピーカーに一番欠けているもの、次の進歩に繋がるKWは「能率」ではないかと考えている。

 

<参考購入先>
ジャズ喫茶「ベイシー」の選択

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