オーディオ機器の目標は「忠実再生」といわれる。よい再生機とは録音されている信号を忠実に伝えられる装置。それが達成されたら機器選びが終わり、以後バラ色の音楽生活を送ることができるのだろうか。
忠実再生と原音再生との違い
「忠実再生」とは、生演奏ではなく「録音」に対する忠実さをいう。「原音再生」も同じで、この原因とは録音されている情報を指す。
これが再生機、つまりオーディオ装置の目標とされている。忠実再生が達成できれば、音楽制作者の意図を聞き手に正確に伝達できることになる。
生演奏の再現とは
生演奏の再現とは、家の中にいながら、コンサートなどとまったく同じ音の体験を再現することをいう。
忠実再生の目標からすると、スピーカから出てくる音が録音通りになっていることが重要であって、生音と一致する必要はない。オーディオ機器はメディアに記録された信号だけを扱い、メディアに記録される以前のことは感知しないのが普通だ。
生演奏の再現は可能か
コンサートの演奏を2chステレオで録音した時点で「別物」になる。生音を再現するためには、この録音のところから変えないといけない。生演奏の再現については昔から研究されているが、課題が多く現在でも困難である。
2chステレオ方式は所詮、疑似再生にすぎない。現在ではDSPと高次元のディジタルフィルターを使って、周波数振幅特性と位相特性を完全にフラットな形で再生できるが、そうしてできた音は生演奏とは程遠い。
生音の再現ができると信じて、それを目標にしている人がいたら、即座にやめるべきだ。不可能なことを追求するのは無駄である。
自分の目標を持つことが大事
オーディオ機器の目標は忠実再生だが、エンドユーザーがそれを目指す必要はない。CDの録音を忠実に再現しても、それが音楽が楽しめむためにベストな手段とは限らないからだ[2]。
エンドユーザーが音楽を楽しむときは、自分が気に入るように再生音を加工したらいい。その最も身近な手段に、「トーンコントロール」がある。
「オーディオ」という趣味は、エンドユーザーが「自分の音を造る」こと。問題はその目標をどこに置くか。それが重要になる。もちろん、忠実再生を目標においてもよい。
目標によってお金がかかる場合がある。目標が明確でない場合は、評論家や他人の言いなりになりやすいので注意したい[2]。
一生付き合えるスピーカーとめぐり逢えるか
オーディオという趣味の終着点は、一生付き合えるスピーカーとめぐり逢うことだと思っている[3]。結局のところ、スピーカーが出てくる音を決定付ける最も重要なコンポーネントになる。
プレーヤー、ケーブル、アンプのことは置いといて、スピーカー探しに注力することが、時間とお金を使わず最短距離でゴールにたどり着く一つの方法だ。
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