スピーカの音の良さは能率に比例するか

スピーカの音の良さは能率に比例する、最近そう思えるようになってきた。能率の高いスピーカは過渡応答に優れ、微小信号によく反応し、細かい音がよく聞こえる。世間の表現を借りれば、

「クリアで鮮明」「打てば響く」「フライパンでガーンと一発」「音飛びがよい」「生々しい」

といったもので、私的には「音が飛んできて頭に突き刺さる」そんなイメージがある。 

 

 「落ち着かない」「ノイジー」というネガティブな論評は応答が良いことの裏返しで、むしろそれが本来のソースの音と捉えるべきだろう。私は知らない年代だが、かつて隆盛したジャズ喫茶もこんな感じの音だったのではないだろうか。
 これに対し低能率のスピーカの音はロスが多く「重鈍」「陰鬱」「緩い」印象がある。この印象は低音を稼ぐためにコーンを重くした小型スピーカで強く感じる

※:私は昔、10cmフルレンジ(FE-103)のコーンにJBL LE-8Tを真似てパテを塗ったことがある。パテを塗り重ねるほど低音が良く出るようになり、10cmとは思えないくらい低音の出るスピーカが出来た。しかしアンプのボリウムの位置はこれまでとずいぶん違い、かなり上げないといけなかった。このスピーカら出てくる音色は、元気で明るい音色のFE-103とは程遠い、暗くてぼんやりした音色だった。

 

  能率の点ではホーン形が圧倒的に有利だから、このタイプを使ったシステムが第一の候補になるだろう。ホーンの能率は軽く100dBを超えるものが多い。ウーファ共々能率100dBを超えるシステムが理想だがそんな商品はきわめて少ない。現行商品ではBagEnd TA1202シリーズ※1、過去の製品ではグランドセプター GS-1※2がある。能率はやや落ちるが、テクニクスもホーンシステムを作っていた。

※1: TA1202は12インチウーファ+ホーンツイータの2Way構成。後ろの型番は外装の違いを示し中身はどれも同じ。ちなみに -Bは1本14.8万円。サウンドハウスから取り寄せ可能。BagEndの商品はこちらに使っている人の記事がある。記事のTA1200シリーズは現在廃番。
※2: GS-1はウーファにもホーンが付くためホーンのカットオフ周波数(おそらく200Hz)以下の音が出にくい。これをイコライザで補正する(中高域を下げて相対的に低域を持ち上げる)関係で能率が犠牲になっているが音色は100dBの実力があると考えてよい。レイオーディオのKINOSHITA MONITOR も候補になるが高すぎて個人は手が出ない

 

 写真はテクニクスのホーン形SPラインナップ(1980年頃のカタログ)で、ちょうど平面SPがブームだった頃。
 左上のSB-10000は46cmウーファーで能率95dB。100dBを超えないのは能率の低いウーファーと能を合わせた結果と見られる。GS-1と並んですごいスピーカーの一つだが、実物は見たことがない。

 

 

 SR用スピーカは注意が必要で、確かに上述した音色の特徴があるものの、低域の伸びは期待できない。中高域にホーンを使ったSR用の小型SPは、以前書いたようにサラウンドシステムのフロントに最適だ。サラウンド用のフロントはAVアンプの機能を使って特性補正&低域カットし、サブウーファを併用する使い方が普通なので、少々音域のバランスが偏重していてもあまり問題にならない。

 高能率システムの良さをホームオーディオとして楽しむ場合は上述のTA1202シリーズが選択肢になりそうだ。ただし高能率型の宿命で重低音は出ない。これを充足しようとすると物量の投入になる。一般家庭ではサブウーファーの追加が適当だろう※3。カットオフを低くして使えば遅れの問題も目立たない。

※3: サブウーファは電流制御でコーンの動きを補償するYST方式が良い。サブウーファの能力も結局搭載ユニットの口径で決まるので出来る限り大型がよい。YST現行品の最大径は25cmであり、このサイズを積む最安機種はNS-SW300になる。

 

 昔からホーン型の欠点として指向性が鋭いことが指摘されてきたが、最近では四方八方に音を散乱させるよりは、音を絞ってリスニングポイントに届ける方が良いという考えも見られる。昔はスピーカの指向性は広いほどよいとされていたが、定在波などの問題が増幅されやすく、同じ室内にいる人に騒音で迷惑をかけることもある。そもそも良好なステレオ再生は2つのスピーカのセンターでなければ得られないから、サービスエリアを広げるメリットはあまり無いかもしれない。

 

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