スピーカーの選び方~能率に注目した選び方のコツ

 能率の高いスピーカーほど応答に優れる。その結果、微小信号によく反応し、細かい音までよく聞こえる。世間の表現を借りれば、

「クリアで鮮明」「打てば響く」「音離れがよい」「生々しい」

といったもので、私的には「音が飛んできて頭に突き刺さる」そんなイメージがある。「ひっぱたかれる」ような強烈なドラムの音や、「金属を摺り合わせる」ような弦の音は、高能率スピーカーからしか出てこない。

 かつて隆盛したジャズ喫茶も、このような音でお客を魅了させていたに違いない。

 

出典:STEREO 1985年6月号

 長岡鉄男氏の作品に能率102dBのスピーカーがある(PA-2 1985年)。

 試聴の結果についてこうある(一部抜粋)。 

「壮絶、圧倒的。メーカー製のシステムでは絶対に聞けないショッキングなサウンドだ。ものすごく音離れが良く、全域にわたってスピード感がある・・・このスピーカーの音は、超音速、というよりは超高速で飛んでくる感じがある・・・音圧の衝撃は力はたいへんなものだ。直径1mのフライパンでガーンとひっぱたかれる。そんな感じである」

 

 但し、能率最優先で作った結果、周波数特性が犠牲になり音色にクセがある。「ソースによってはちょっと落ち着けない」とコメントされいる。

 

口径の割に能率が高いスピーカーを見える形にする

 能率102dBは文句なしに能率が高い。しかし口径の割に能率の高いスピーカーがある。例えばクリプシュのR-14Mは10cm口径で90dB。これは能率が高いといえるのだろうか。そこで、これを比較できるグラフを作った。

 

図1 スピーカーの口径と能率の関係

 オレンジのプロットは、高域の再生にホーン形ユニットを使った、いわゆる「高能率スピーカー」。オレンジプロットのうち、ボトムを繋いだ線を高能率のボーダーラインとした。

 すなわちオレンジの線から上のものは、口径の割に能率が高いスピーカー。線の傾きは参考程度にして欲しい。オレンジの線から-3dBのところを中能率のボーダーラインとした。

 注意:ウーファーがダブル(2連)の場合、カタログスペックの能率から3dB引いた値で表と比較する(3連は4.8dB、4連は6dB引く)。

※:スピーカーの能率は、その質量m、面積S、駆動力F(=BL・I)によって決まる。口径に比例してSが増えるとmも同時に増えてほぼ相殺されるが、磁気回路が強力になってFが増えるから、それで能率が向上する。

 

高能率・低能率の利点と欠点

高能率スピーカー

(利点)
・応答に優れた生々しい音質が得られる
・微小な信号によく応答し、大音量でも音質が崩れない
・アンプの出力が小さくて済む(アンプにお金がかからない)

(欠点)
・低音が出にくい(振動板が軽い為)
・周波数特性にクセを生じやすい

 

低能率スピーカー

(利点)
・周波数特性をフラットにしやすい
・低い周波数の低音が出る(振動板が重い為)

(欠点)
・重鈍で暗い音質
・大出力アンプが必要(アンプにお金がかかる)
・大音量再生が苦手(歪が目立ち、うるさく感じる)

※:私は昔、10cmフルレンジ(FE-103)のコーンにJBL LE-8Tを真似てパテを塗ったことがある。パテを塗り重ねるほど能率と引き換えに低音が良く出るが、元気で明るい元の音色とは程遠い、暗くぼんやりした音だった。

 

欠点の改善策

(高能率スピーカー)
・低音が出にくい →サブウーファーを追加する
・周波数特性にクセを生じやすい →周波数特性がフラットな機種を選ぶ

 高能率SPは能率を優先した設計で周波数特性が犠牲になっている製品が多い。そんな中にも特性に配慮した機種がある。こういう商品を選び、不足する低域をサブウーファーで補うことで音質的に満足いくシステムを作れる[1]。

(低能率スピーカー)
・重鈍で暗い音質 →アクティブサーボをかける(低音のみ改善)
・大出力アンプが必要 →(改善不能)
・大音量再生が苦手 →(改善不能)

 低能率の方はどうしようもないものが多い。アクティブサーボで電流フィードバックをかけると、質量を補償できる。以前ヤマハがASTと称してこの技術を売りにしていた。現在はYSTに名前を変えて同社のサブウーファーに受け継がれている。

 

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応答の速さはユニットの能率で決まる

 高能率スピーカーの大きな特徴である応答の速さは、振動系の質量と駆動力で決まるので、口径が同じであれば能率が高いものほど応答が良い。

図2 ダイナミックスピーカーの遅れ データはエンクロージャ設計支援ソフトsped付属のものを使わせていただきました。

 能率とTSパラメーターからダイナミックスピーカーの遅れ(共振点付近を除くフラットな領域の遅れ)を概算してみた。縦軸は38cm口径100dBの遅れを1とした時の比率。

 口径が小さいほど遅れが少ない(応答が速い)。遅れの傾きは能率6dBごとに約2倍。

<参考>
遅れは、音圧の立ち上がり時定数をTとすると、
T∝m/F 。SPL∝S・F/m、SPL∝10(能率/20)、F=BL・I などから、Iを求めてT∝m/(BL・I )で遅れが求まる。Iもコイルのインダクタンスによる遅れを含むが、十分小さいので無視できる。

 

応答の要求は周波数によって異なる

 音の波長は周波数によって大きく違うので、応答もこれに応じた要求があると考えられる。例えば100Hzと1kHzでは10倍波長が違うので、波形の再現性を考えると1kHzは100Hzよりも10倍の速くないといけない。

 100Hzの1波形は10ms。ウーファーの応答はこの1/10(1ms)あれば十分だが、1kHzの1波形は1msなので、ウーファーの遅れが1msあると1波形まるまる遅れてしまう。

 

応答のよいスピーカーシステムを選ぶ際のポイント

 一般にツイーターの応答は、ウーファーより振動系が軽い分、ウーファーよりずっと速いと考えられる。1kHzの応答をウーファーに求めると厳しいが、ツイーターに任せれば楽に出る。

 つまり、応答の速いツイーターを出来る限り下の周波数まで使った(クロスオーバーさせた)システムが、全体として応答に優れたシステムになる。

 

ウーファーの応答はどれだけあればよいのか

 最初にご紹介したPA-2のウーファー(PS300)は30cm 98dB。図2では0.8のポイントになる。これで超音速サウンドが聴けるということは、ウーファーの応答はこのあたりで十分かもしれない。同じ応答を38cm口径で求めるとかなり厳しい。絶対的な音量が要求されるSRでは38cmが必要だが、ホームユースでは30cmが最適解かもしれない。

 先の例で100Hzの1波形は10ms。応答がその1/10(1ms)を切ると、そこからいくら速くしても出てくる波形はあまり変わらない。つまり、より良い応答を求めて小口径を選ぶと能率を落とすだけでメリットは無いと考えられる。

 

ホーン形、ドーム形ユニットの応答を知る方法

 ミッドレンジやツイーターにホーン形やドーム形のユニットが使われている。ホーン形はホーンによる利得が上乗せされて能率が高くなるため、ドーム形と単純に比較できない。

 同じホーン形、ドーム形同士なら比較できるが、ユニット単体の能率はわからないことが多い。

 ホーン形やドーム形ユニットの応答の速さを知る一つの参考に、マグネットの重さがある。「駆動力」に直結する磁気回路の大きさ、すなわちマグネット重さが、応答の速さに比例すると考えられる。

 マグネットの重さが不明な場合、本体が重さ(ホーンはドライバ部分のみ)が参考になる。

 


 

過去の高能率スピーカー

  能率を高めるうえではホーン形が有利だが、民生用の高能率システムは過去を振り返ってもあまりない。

 一つは図1にプロットした三菱電機2S-305。他はテクニクスSB-E100、外部イコライザーを使う前提でONKYO グランドセプター GS-1(28cm,97dB/unit)がある。

 パイオニアのS-HE100(25cm,93dB/unit)、エクスクルーシブ2402(40cm,95dB)はいずれもは中能率。

 テクニクスのホーン形SPラインナップ(1980年頃のカタログ)で、ちょうど平面SPがブームだった頃。

 左上のSB-10000は46cm,95dB(中能率)。右のSB-E100の方は30cm,95dBなので高能率の部類に入る。

 

 

高能率スピーカーの候補

 現在のお勧めはヤマハS115VまたはS112V。但し鑑賞用に使う場合はサブウーファーが必要。詳細は下記の関連記事を参考にして欲しい。

 

<関連商品>
ヤマハS115V 15インチ(38cm,99dB) 特性がフラットでお勧めの高能率スピーカー
クリプシュ 小型高能率なスピーカーはこれ以外ありません。RP-160Mなど16cm口径で96dBもあります。

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