移動体にフライホイールはNG!~地球ゴマを使ってジンバルの挙動を理解する

 地球ゴマにジンバルリングを2個追加した実験道具を作った。これを使って、頭ではイメージが難しい回転体特有の挙動を動画でご紹介し、クルマなど移動体に載せることが難しい理由を説明する。

 

地球ゴマについて

 地球ゴマが2015年4月を持って生産を終了し、生産元が廃業することになった。私が持っている地球ゴマは最近買ったもの(といっても10年くらい前)だが、子供のころ売っていたものとあまり変わっていないように見える。何十年もの間、意匠もパッケージも変えずによく同じものを作り続けてきたと思う。

 現在Amazonなどから購入できるが、非常に高額になってしまった⇒地球ゴマ

 

教材としての活用

 地球ゴマの魅力はジャイロ効果を利用した曲芸にあるが、何故それが出来るのか踏み込んで考える人は少ない。それにジャイロの理屈は難解で教科書を読んでもなかなかイメージできない。

 地球ゴマはジャイロ効果の理解を助ける教材として使われることがあるが、売られている玩具単体では不十分なため、教育の現場ではいろいろ追加工作されているようだ。

 

地球ゴマ Aタイプ 写真は私の持っている地球ゴマ。枠の外側にジンバルリングを2個追加したスペシャルバージョン。ちょっと手を加えれば、ジャイロモーメントの理屈を理解するために役立つ教材になる。

 

 

ジンバルの実験

  このオモチャを使うと二自由度ジンバルと一自由度ジンバルの挙動を確認できる。二自由度ジンバルはロケットや船舶に乗るジャイロスコープに近い。百聞は一見にしかず、動画を見て欲しい。

 

 いかがだろう。二自由度ジンバルは重心で支持しているため歳差運動が起きない点に注目。一自由度ジンバルは回転方向と旋回方向が一致するとき安定で、そうでない場合はひっくり返って安定方向になろうとする。こういったことは頭で考えていてもなかなか見えない。

 二自由度の動画では装置の重心、回転体の重心、ジンバル機構の支持点の3つがすべて一致している。これらの位置関係を変えると挙動が変化する。

 例えば大きな慣性体をバッテリ代わりに移動体に乗せるケースを考えた場合、装置の重心がジンバルの支持点より少しでも上にあると歳差運動が拡大して不安定になる。

 装置重心を支持点より下げておけば歳差運動が起きても収束して安全、そう予測できる。本当にそうだろうか。それがこの動画が教えてくれる。

 これでは二自由度ジンバルでも移動体に載せられない、そう思う人も多いと思う。こういう設計のものを右にも左にも旋回可能なクルマに載せればひっくり返るだろう。

 

クルマにフライホイールを載せられるか

 そもそも重量がかさむ大きな慣性体は移動体に向かない。どーしても乗せたいというなら、ジンバル機構を付けずに縦置きし、2輪車同様、進行方向に回転させるのが良いだろう。

 移動体でジンバル機構を使う目的があるとしたら軸受の寿命軽減と、操縦性悪化の防止。このようなジンバル機構を付ける場合は、最初の動画のように装置の重心、回転体の重心、ジンバル支持点の3つを一致させなくてはならない。

 しかし現実には完全一致は困難で傾いてしまうことが避けられず、一度傾くと姿勢を直せない。そこで、多方向から弱いばねで引っ張るなどして、所定位置を保持する弱い力を常に働かせるのがひとつの解になる。

 ばねで引っ張ると歳差運動が起きないだろうか。ほかに解はないだろうか。たとえば、装置重心は下げたまま、回転体の重心を支持点に揃えたらどうなるだろうか。こういうことを知るには、地球ゴマを入手し、自分の手で納得いくまでいじり倒してみる以外ない。

 

<参考購入先>
地球ゴマ一覧 動画で使っているのはAサイズです

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