布バッグ スーツケースの撥水・防水効果を10倍以上に伸ばす

 スーツケースにはハードタイプソフトタイプがある。水が染みるが使い勝手のよいソフトにするか、ハード+キャリーオンバッグにするか。悩ましい選択だ。ソフトで撥水スプレーより優れた防水加工ができれば、活用する機会が増えるに違いない。

 

スーツケースを引いて移動するビジネスマン

 最近のビジネスシーンではパソコンが必須になっている。ノートパソコンの重さは1キロを超えるものが多く、2キロ近い商品もある。そんなパソコンを手鞄やショルダーバッグに入れて持ち歩くのは結構しんどい。

 重いものを長時間手に持つと健康に悪い。姿勢が崩れ腰や肩を痛める可能性から、営業マンにリュックを持つよう勧める事業者もあるようだ。

 都心部の駅ではスーツケースをコロコロ引くビジネスマンを多く見るようになった。重いパソコンもスーツケースに入れてしまえば重量は気にならない。重さを気にせず何でも詰め込んで移動できる。スーツケースは手持ち限界を超えてしまった重量を改善するための一つの解なのかもしれない。

 

ハードタイプとソフトタイプの違い

 ハードタイプは水濡れに強く、頑丈にできている。しかし移動中の開閉が難しい欠点がある。基本的にホテルに着くまで空けない。そんな使われ方に適したケースだ。

 ソフトタイプはこれと正反対の特徴がある。移動中の荷物の出し入れが容易。ポケットが沢山付いているため使い勝手がよい。しかし水濡れに弱い。

 防犯性能は大差ない。最近のハードタイプはポリカなど薄い樹脂外装なのでナイフやハサミで切れてしまう。

 

キャリーオンバッグ

 移動中に開閉しずらいハードタイプの欠点を補う解決策がある。もう一つ別のバッグを用意し、スーツケースの上に乗せることだ。移動中に脱落しないよう、スーツケースのハンドルに差込むバンドが付いた商品が市販されている(キャリーオンバッグという)。

 ハードタイプのスーツケースではキャリーオンバッグなどの別のバッグが必要になるだろう。もしソフトタイプの水濡れに弱い弱点を克服できれば、キャリーオンバッグは必ずしも必要でなくなる。ソフトタイプを選ぶ人が増えるのではないだろうか。

 

恒久的な撥水加工か可能か

 雨の日にソフトタイプのスーツケースや鞄を持ち出す際、市販の撥水スプレーを使う人が多いと思う。この中身はフッ素かシリコン。効果は一時的なもので摩擦などにより簡単に失われる。商品に付いてくる「撥水加工」も数回濡れたら終わりの代物だ。

 以前、皮革にワセリンを塗ってオイルレザーにする方法を紹介した[1]。強力な耐汚染、撥水機能を付与できる。皮革と繊維は似たようなもの。同じように使える可能性がある。

「そんなものが」「ベタベタになってダメに決まってる」

などの声が聞こえてきそうだが、ダメだと決めつけて誰も試さなかったことが意外に良かった、という話はままある。

 

実験

 論より証拠。早速実験してみる。用意した材料はポリエステルと綿の布。これらの試験片の半分の領域にワセリンを染み込ませる。前回ご紹介したようにドライヤーを使うと早い。ワセリンを染み込ませると風合いが若干変化する。繊維に染み込むのでベタベタすることはない。

 1枚目の写真はポリエステルと木綿の布地(右半分)にワセリンを含浸させたもの。著しい撥水効果を発揮する。このまま数時間経過しても染み込まない。これは「防水」といって過言ではない。

 2枚目の写真はこの布片を毎日洗濯機に放り込んで5回、洗いと乾燥を繰り返したもの。洗剤はアリエール サイセンスプラス7、水は風呂の残り湯(30℃)使用。

いろいろな布地にワセリンを染み込ませたのち、水を滴下した様子 ワセリンを染み込ませた布を5回洗濯したのち、水を滴下した様子

 ポリエステル(左上、左下)、木綿(右上、右下)。ポリエステルを加工したものは5回洗っても撥水効果を維持している。木綿は1度洗っただけで撥水効果が消失して水が染みこんだ。この違いは、繊維の構造によるものと見られる。

 様々な素材に加工した結果、適合があることがわかった。スーツケースやバッグなど、表面が滑らかでツルツルの生地に有効。界面活性剤が付いた素材(シートクリーナーなどを付けて水洗いしてないもの。クルマのシートなど)は塗っても染みてしまい、あまり効果がなかった。

 

実例

 写真左は布製のスーツケースに塗布した結果。レインカバーにもたっぷり塗っておく。ファスナーの布地も忘れずに。ワセリンの塗布はスポンジブロックを使って塗り伸ばす。常温で塗りずらい場合は湯煎で溶かすと楽になるが、一度に沢山付くので塗りすぎに注意。

布地のスーツケースにワセリンを塗った様子 ワセリンを塗ったスーツケースをラップでくるんだ様子

 塗ったら右のように埃が付かないようラップをかぶせておく。数日後、染み込まなかった余分をふき取る。この時点ではまだ塗りムラが目立つが、時間経過に伴い浸透が進み、1週間すぎた頃から目立たなくなる。

ワセリンを塗り込んだスーツケースに水を吹きかけた様子 水をかけるとこの通り。このまま数時間放置しても染みていかない。これなら天候を気にせず持ち出せる。

 

ワセリンを染み込ませたナイロンバッグに水を吹きかけた様子 ナイロンやポリエステルのバッグに塗布した結果。少し色が濃くなるので高級感が出る場合もある。

 その他、アイデア次第で様々なものに応用できそうだ。

 

 

<参考購入先>
リュックキャリー 満員電車では背中に背負えて、そうでないときコロコロ引けるバッグ
ソフトスーツケース 骨格がしっかりしたケース。国内出張では容量30L前後(Sサイズ)が最も使いやすいです
YiYiNoe 手さげバッグ キャリーオン機能付PCバッグ。黒いバッグが多い中デザインに優れた異色の商品です
バッグとめるベルト キャリーオン機能のないバッグもこのベルトで固定できます
キャスター 一番壊れやすい部分。キャスター1個の破損でスーツケースまるごと破棄、なんてことにならないよう交換可能なスーツケースを選んでください

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