ネットの情報はウソだらけ!~ラバーコーティングのべたつきを綺麗に確実に除去する方法

手触りの良いラバーコート(塗装)は数年でべたつきが起こり外観や手触りがとても悪くなる。そこで劣化を遅らせる方法を検討し、劣化したラバーコートを綺麗に剥がす方法を紹介する。

 

べたつきはなぜ起きるのか

 べたついたラバーコートの上に塗料を乗せてもベタベタしたまま固まらない。この結果から、問題のラバーコートは可塑剤でトロトロに溶かした塩化ビニールを吹き付けたものかもしれない。安い中華製品でも見かけることから、耐久性が望める高級な塗料ではないことは確か。

 ちなみに、市販のラバーコート(塗料)は、スチレンブタジエンゴム(SBR)が使われている[5][6]。これも劣化するが、もともと水に強い材料[1]なので、劣化要因はネットで言われる加水分解ではなく、一般的なゴム劣化要因、すなわち紫外線、酸素(オゾン)が主になる。

 ネットには加水分解を挙げる記事が多いが、それはウレタンの話でラバーコートとは関係ない。間違った記事が多いのは、他人の記事をコピーしているため。ウレタングリップの話と混同されるのは、コピーする人にゴムとウレタンの区別ができないためだろう[4]

 

べたつきを防ぐ方法

 ラバーコートがSBRの場合は、後塗りで酸素か光を通さないようにすればよい。タイヤでは劣化防止剤にワックスが使われ、これが適度に染み出すことで表面を保護している[3]。そこで、ラバーコートにもワックスを使って劣化を遅らせることを考えた。

 

ワックスで劣化防止する

 ワックス=パラフィン(ロウやクレヨンなど)をこすりつけ、ドライヤーなどで溶かして被膜を作る。これでタイヤと同じ劣化防止の効果が期待できる。

ラバーコートの表面にロウとクレヨンを擦りつけたところ

 写真はラバーコートされたプラスチックのカバーにロウと黒のクレヨンを擦りつけたところ。ここにドライヤーで熱風を当てて溶かす。

ラバーコートの表面に擦りつけたロウとクレヨンを溶かしたところ

 ドライヤーの熱で溶かしてティシュで余分を拭き取った様子。どちらも塗ってあるかどうか、わからない仕上がり。

 

注意点

 ロウは60℃くらいで溶ける。ドライヤーではロウが溶けるまで加熱に時間がかかるが、加熱しすぎるとプラスチックが変形するので注意。

 溶かした後、拭きとらずそのままにした方が厚い被膜が残るので保護効果が高い。見た目を気にしなければ、ティシュなどで拭き取らない方が良い。

 

検証結果(2021/10)

こちらは施工2年後の様子。期待に反してベトベト。効果がなかった。これはやはり、SBRではなく、塩化ビニール+可塑剤なのかも。今のところラバーコートの劣化を防止する確かな方法は見つかっていない。可塑剤の染み出しが原因なら何をしても無駄。打つ手なしである。

ベタベタになったラバーコート

 


 

べたつきを直す方法(2021/10/7)

 これについてネットを調べると、アルコールで拭け、消しゴムで擦れ、重曹に漬けろとか書かれた記事がヒットする。実際やってみると、どれも効果が無い。間違った情報が多いのは、間違って書かれた他人の記事をコピーするため[4]

 ラバーコートは、塗料剥がし剤、例えば模型用のペイントリムーバーで剥がせる。以下はその様子。塗るとすぐにシワができるので、これをふき取るだけ。

劣化したラバーコートを剥がしている様子

このように簡単に剥がれる。ラバーコートは塗料なのだから、塗料剥がしを使えばいい。

劣化したラバーコートを剥がしている様子

ペイントリムーバーの主成分は、おそらくリモネンとアルコール。写真はクレオスの商品だが、成分が同じなら何でもよい。水溶性で金属を侵さないが樹脂を侵すのでコートを剥がした後よく水洗いする。成分が残ると樹脂を侵してクラック(ヒビ)が入るなどのダメージを与える。水洗いが必須な関係上、電子機器を処理する場合は、分解して中身を取り出してから作業すると良い。

 

下は剥がした結果。コートは綺麗に剥がれても、見た目は前より悪い。これはリムーバーの成分によって表面が侵されたため。特にABSが侵されやすい。侵されるといっても表面だけで、全部が溶けて無くなるわけではない。

劣化したラバーコートを剥がした結果

 

800番くらいのペーパーで軽く下地を整えて、黒のクレヨンで塗装する。低風量のドライヤーで温めながらぬり伸ばす。割と簡単。クレヨンが手に付くと汚れるので、余分を良くふき取る。ABSは熱に弱いので加熱しすぎないよう慎重に。

クレヨン塗装している様子

 

完成品。まるで元のラバーコートの手触りと質感。ペイントリムーバーで荒れた素材の表面がちょうどいい塗装下地になっている。クレヨンを使ったが、住宅の補修で使うかくれん棒のほうが丈夫な被膜を作れる。

クレヨン塗装した結果

 

結論

 ラバーコートは必ず劣化してベタベタになる。予防手段が無いので、私たちにできる最善の対策は、コートされた商品を避けることになる。特に、ラバーコートされた高額商品に注意したい。

 

<参考購入先>
ラバーコートの除去と補修に必要な資材です
模型用のペイントリムーバー
低風量のドライヤー
クレヨン
ラバーコート 用途を間違わなければ有用な塗料です

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<参考文献>
1.ゴムナビ
5.プロト ㈱ハギテック
6.液体ラバーコート ジェフコム㈱

ご注意:本記事は執筆時点で過去に類例がないことを確認しています。転載、引用する場合は、必ず出典を明記してください。ルールはこちらをご参照ください。