3万円に満たないPCチェア、オフィスチェアはガラクタ同然。私はこの価格帯の商品を4脚買い、すべて廃棄処分になった。そんな経験から、失敗しないための選び方のコツをご紹介する。
3万円以下のチェアに見られる問題点
これまでの経験から次の通り。
1.長時間座ってられない(腰や尻が痛くなる)。
2.腰が前にズレてしまう(猫背気味になる)。
3.大ももの裏がフレームに当たって痛い(メッシュチェアに多い)。
4.リクライニングするとキーキー音が出る。
5.高さ調整幅が不適当(最高まで上げても低すぎる、もしくはその逆になる)。
6.ガスシリンダーの固定穴が広がってシリンダーが下降し、床に接触し傷つける。
このクラスで一番高額だったコイズミのJGシリーズには2の問題があり失敗だった。買う時に丹念に試座を繰り返して選んだものだったが、長時間座ってみないと解らないこともある。
試座のできない通販のリスクは高い。どれを選んでもダメな可能性がある。口コミもあてにならない。
クッションがへたった1万円チェアの座面をめくってみたところ。ペラペラのウレタンフォーム2枚重ね+チップウレタンの構成だった。
こちらはコイズミ学習机(子供用 総額10万円クラス)についてきたチェアの座面をめくったところ。
この椅子はリクライニング、座面前後、背もたれ前後と調整機構は豊富。クッションは一応モールド(端までめくって確認)で作られているが座面の下は普通のウレタンフォームと変わらない。へたってしまったので廃棄処分になった。
3万円以下のチェアはガラクタ同然
椅子は想像以上に過酷な使われ方をするアイテムだ。人の体重による大きな繰り返し荷重が毎日のようにかかる。構造体にも、クッションにも、かなりの耐久性が要求される。
3万円以下の商品は、後述するJOIFAが要求する耐久試験などしていない。1年くらいでどこかが傷み、我慢して使っていると次第に壊れていくものがほとんどである。
失敗しないためのセオリー
そんなオフィス市場にも、家具選びで失敗しないセオリーがある。
オフィス家具は、JOIFA会員(オカムラ、コクヨ、イトーキ、ウチダなど)の商品から選ぶべし
といわれるのがそう。JOIFAとは日本オフィス家具協会のことで、ここの正会員は安全性や耐久性の面で一定レベルの品質を満たす商品を作っている[1]。見た目は激安商品と変わらないが、中身は別物。
つまり、JOIFA会員のメーカーから選ぶことが、一つの重要なポイントになる。
これらのメーカー品は高額だが、中古なら視野に入る。ねらい目はオフィスや事務所で大量に使われる普及価格帯の商品で、概ね実売価格の1/3で入手できる。
オフィスチェアの選び方
デザイン
家具などのインテリア用品と同じ原則が当てはまる。
張り地については、黒、ベージュ~茶色。本体(シェル)については、黒やシルバー(脚部)を選べば問題ない。
オフィス家具はいかにも事務用品といったデザインが多いが、上記の色を選べば一般家庭に持ち込んでも違和感を生じない。
前傾・後傾と用途
椅子は大きく分けて前傾型と後傾型に分かれる。前傾型は背もたれが垂直(90度)に近く、後傾型は背もたれが10~20度くらいになっている。用途に応じて次のように選ぶ。
書き物、工作などの作業用 ⇒ 前傾
パソコンなどのOA作業、ゲーム⇒後傾
テレビ、映画鑑賞⇒後傾+ハイバック+ヘッドレスト
複数の用途で使う場合は、最も長時間使う用途で選ぶ。この選択を間違えたり、必要ないのにヘッドレスト付きを選んでしまうと邪魔になったり使いづらくなる場合があるので注意したい。
肘(アームレスト)について
アームレストは肘を動かさないとき肘の置き場所を提供するためのアイテム。会議や映画鑑賞、乗り物などでは、これがあることで楽な姿勢を維持できる。
しかし、肘が付くと座る為に椅子を多めに引出したり回転させないといけないから、立ったり座ったりすることが多い用途では無いほうが使いやすい。
会議・鑑賞が多い場合は「固定肘」、学生、子供、パソコンなどのOA作業用では「肘なし」とするのがよい。
10万円を超える高級チェアの価値とは・・
1脚10万円を超えるカテゴリにはエグゼクティブ用と高級デザインチェアがある。前者は事務・作業用には向かないといわれる。後者はアーロン、リープ、コンテッサ、バロンなどが該当し、こだわる人に人気がある。
デザインチェアの座り心地は一般的なオフィスチェアに対して特別モノが良いわけではなく、耐久性も一般的商品より劣る部分もあるようだ。
そのため中古を安く買えても外観や機能を維持するための出費が必要になことがある。具体的には、パーツの一部破損、メッキ剥がれ、ポリッシュ光沢面の曇り(錆び)などがある。
また、高級チェアの多くはモノが大きい。本体は小さくても脚部の径が非常に大きい(リープは770mmもある!)場合もあるから、導入の際はサイズに注意したい。
実例
数万円の激安商品はやめて、イトーキやコクヨなどのJOIFA会員の商品を買うことにした。これまで購入した製品について以下にご紹介する。
1.イトーキのプラオ、バーテブラII(中古)
楽市で購入したプラオとバーテブラII。状態は比較的良好。シートにヘタリはなく丁寧に洗浄されておりいやな匂いは全ない。
上下調節のガスも抜けなく良好。「イスはパンツと同じ、他人が使ったものは綺麗でも気持ち悪い」と思っていたが、中古でこれなら文句無い。
プラオのレビュー
デザイン・インテリア性
購入したのはローバック&固定肘。丸みのあるエッジで統一され柔らかい印象を与える。全体的に違和感の少ない綺麗な形をしている。沢山の色があるが、一般家庭に入れることができるのは黒のみ。生地の模様は単調であり、一見1万円未満の激安チェアに見える。
機能
アームレストの表面にはラバーが貼られており、触った感触がよく滑らない。ラバーに劣化は認められず、比較的良質な材料が使われている模様。
アームレストの間隔は多少広め(center to center で55cm)だがキーボード作業時に肘受けができる。可動肘が付いたものは細かい調整ができて便利だが、固定肘でも座面の上下でカバーできて実用になる。
背もたれにはガスダンパーが付いている。ロックを解除してフリーにしたり、好きな場所で固定にできる。
座面、背もたれのクッションは反発が少なく柔らかい。背もたれのランバーサポートは違和感ない調整ができるが、あまりメリットを感じない。この手の装備は無くても良いもの。
座面の前後調整があり、固定位置は4箇所ある。座面を一番引いて背もたれをロックすると前傾作業もできるが、垂直の背中まではサポートしない。
座面や背もたれ調整機構へのアクセスは分かりやすく、レバー類も使いやすい。
座面底部のカバーにガタつきがあり、足を組んだままひざを曲げるとイスの下でカカトにカバーが当たりカタカタいう音がすることがある。これは緩衝材をはさむことで改善できる。
座り心地
座った感じは可も不可もなくごく普通。座面や背もたれが丸みを帯びていて体との接触面積が小さく、ボールに乗ったかのような印象がある。
グリスアップ後の座面調整部は前後可動部にガタができてやや落ち着かない。
総合
どこにもクセのない普通を感じさせる商品。特に欠点も見当たらない。この「ごく普通」の特性が本商品の魅力といえる。使い勝手もよく多くの人にお勧めできる。
バーテブラIIのレビュー
デザイン・インテリア性
購入品は背もたれがやや高めのミドルハイバック。リング形状のアームレストが美しいカーブ。ダーク系のバーテブラIIは一般家庭のインテリアと調和する。
機能
調整機構は上下のみだが可動部は多く、姿勢に応じてこれらが有機的に動く仕組み。一々レバーを操作しなくても体重移動だけで作業姿勢からリクライニングまでできる。それも適度な摩擦があり滑って落ち着かない事にはならない。
リクライニングの動作は角度に関係なくリミットまで反力ほぼ一定。徐々に反力が増えて荷重とつりあった点で止まるバネ式のものとは異なり快適。
アームレストはプラオより5cm幅広く、イスの中央に座るとキーボードやマウス操作中は完全にひじから離れる。腕を休めるときだけ乗せる装備と考えておきたい。
購入したのは後傾用でOA作業に適するが垂直の背中まではサポートしない。バーテブラには座面が垂直になった作業用の品番があり、書き物や工作をする場合はこちらが適している。
イスから立つとき前に傾く機構がある。バーテブラは座面がお尻側に傾斜しており、そのままだと座りにくくなるのでその対策とみられる。
この機構はアーロンと比較されることがあるが、バーテブラのそれはあくまで座ったり立つ動作をしやすくするためのもの。この機構を前傾用途に積極的に活用することは無理。
座り心地
クッションは薄く硬めでスポーツシートに座ったような感覚に近い。座るとお尻の収まりがよく、背もたれにはしっかりしたサポート感があるが、背の低い人が座ると圧力のポイントがやや高い位置にくる。身長170cm以下に満たない小柄な人はS字を形成できず、腰に負担がかかる結果になるようだ。
総合
通常、イスにはいろんな調整機構がある。いろいろ調整してみて、最終的に固定して使うことになるのが普通だ。バーテブラは姿勢に応じて自在に変形する特徴があり、その調整機構を廃している。
座れば勝手に最適な形状になる。その収まりに関係する摩擦や反力の度合いが最適に調整されていて、滑りやすかったり、動きが硬くて変形しにくいといったことがない。
調整機構が一切無い代わりに座る人の体格を選ぶようだ。世間で言われている座り心地の評価は、このイスが体に合う人の話であり、決して万人向けではない印象を持った。
2.コクヨ プント
新品で購入。ハイバック、可動肘、ランバーサポート付きで貼地はネット上にあまり写真がみられない「チャコールグレー」を選んだ。
デザイン・インテリア性
チャコールグレーはこげ茶色の明度を明るくしたような色。模様も入っていて高級感があり事務チェアというより家具と呼べるレベルにある。
機能
必要な調節機構はすべて備わっており、レバー操作も分かりやすい。
可動肘の表面は柔らかい素材が使われている。上下調節のほか、角度変更が可能であり実用的。アームレストの間隔はやや広い。4cm縮めるとちょうどよさそう。
エアで膨らむランバーサポートはよく出来た構造だが上下調整できないしエアを入れても局部的に圧迫感を増すだけ。無くても良さそうだ。
可動肘の回転機構は不要。肘を持ってイスの向きを変えようとする動いてしまい、いちいち直す必要が生じる。高ささえ合えば固定肘がよい。
座り心地
座った感触は背中と座面の接触面積が多く、そこにすっぽりフィットする感じ。座り心地が良く1日中座っていても違和感がない。座面はトレンザに比べると硬め。
座面は腰の前ズレ防止に効果的といわれるポスチャーサポートシートだが、私が座った感じは中途半端な印象。あと5mm、お尻の出っ張りにあわせて凹ませてほしい。
ハイバックは肩までサポートがあるため上半身の自由度が拘束される印象。頭の支えがないためリクライニングしてもクビで折れ曲がる。頭の支えがないハイバックは見た目だけ。ローバックの方が気持ちよく背伸びできることを知っておきたい。
この商品はローバックとの価格差があまりないが、機能的にはローバックで十分だった。
総合
コクヨが考えるベストな座り心地とは、こういうものだと感じさせる一脚。家具としてのクオリティも備えたお勧めの一品。
脚部はアルミの磨き仕上げで、クリア塗装など表面保護は何もない。こういう部分を長く美しく保つためには透明な錆止め護塗料[1]が有効。
3.コクヨ トレンザ(中古 2015/5/30追記)
写真は楽市で2脚確保したうちの一つ。仕事先で使って非常に座り心地が良いことを知り、ずっと狙っていた品。
トレンザは廃番になっていて新品で買うことができない。中古で黒が出るのを長いこと待って、ようやく手に入れた。
デザイン・インテリア性
トレンザの中古はブルーが多い。張り地と本体(シェル)が両方共ブラックのものが一般家庭のインテリアと調和する。
機能
ロッキングとは別に背もたれの角度調整が可能であり、背中のノブを回すだけで垂直に近い背中のサポートまでできる。この機構のおかげで、前傾、後傾の両方に対応可能な数少ない商品になっている。
可動肘は上下の移動機構が付いておりとても便利である。アームレストの間隔も広すぎず狭すぎず、ちょうどよい。
リクライニングやシート上下操作部が分かりにくい位置にあり、操作もややしづらい。
座り心地
柔らかくふわっとした感触で座り心地は抜群によい。座面が柔らかい分、お尻や大腿部との接触が密となるため夏場は蒸れやすい。
マネージメントクラスのハイバックは肩まで背もたれがあるが、頭の支えはない。ハイバックは見た目だけであり、ローバックの方が実用的。
総合
背中のノブを回すだけで前傾、後傾の両方に対応可能なユニークな商品。この機能が付いたのは、事務所にパソコンが普及する過渡期に設計された事情があるとみられる。
前傾、後傾の両方に対応可能なうえ、座り心地が抜群にいい。無条件にお勧めできる一品。
オフィスチェアの課題
オフィスチェアに座ると自動車用シートとの差が気になってくる。最近の自動車用シートは良くできていて、フィットやNBOXクラスであっても、そちらのシートの方がずっといい。イスに関する研究と技術は、どうやら自動車用の方が進んでいるようだ。
椅子を買い替えたくなる理由の中に「長時間座っていると腰や尻が痛くなる」ことがある。これは、腰が前にずれて猫背の姿勢になることが関係している。
自動車用シートでは座面がお尻に向かって傾斜しているので、腰が前にずれるなどして猫背の姿勢になることがない。
座面がずれて猫背になるのは、お尻と座面の形が合っていないことが原因ではないか。この改善策は結局のところ、お尻のところを素直にへこませるのがベストではないかと考える。
座面の一部をへこませることで腰の前ズレ対策をした商品は少ない。現行商品ではコクヨのプント(ポスチャーサポートシート)、ウチダのパルスチェア(坐骨前方サポート)がある。
コクヨでは2013年末から発売されるウイザード2やインスパインなどにポスチャーサポートシートの付いた商品を投入する計画になっているから、これは今後コクヨの標準装備になっていくとみられる。
<参考購入先>
OAチェア一覧 コンテッサ、バロンなど人気商品が豊富。このくらいの価格が最低ライン
コクヨプント 私が買った椅子です
フロアシート キャスターによる傷つきを防止します
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<参考文献>
1.JOIFA オフィスの安心・安全(リンク切れ)