なすを綺麗な紫色に焼く方法

なすを炒めると、皮が褐色に変色し、ヨレヨレの無残な姿になることが多い。なぜこうなってしまうのか。この原因を明らかにして、なすを上手に炒める方法をご紹介する。

 

調理の問題点

 生のなすはスポンジのような構造もっており、油をよく吸うほか熱伝導率が悪い。そのため生のなすをいきなりフライパンで炒めると油をどんどん吸う上、火が通るのが遅くて調理に時間がかかる。濃い紫色だった皮は褐色になり、油を吸ってベチャベチャ。冷えると縮んでヨレヨレ。これがよくある失敗だと思う。

 これについてネットで調べると「皮に切り目を入る」「油を塗って皮から焼く」などというアドバイスがあるが[1]実際やってみると再現性がない。ネットを検索すると似たような記事が沢山ヒットするが、ほとんどが他所のコピー。マジメに原因を解明し本質を押さえた情報が見当たらない。

 写真は仕上がりの様子。左の3つは綺麗な紫色、右の3つは茶色くなった失敗例。この調理の本質を探り、左側の状態を確実に作るコツをご紹介する。

焼いたなすの例

 

寝かせ

なすは買ってきたばかりの新鮮なものではなく、冷蔵庫で数日寝かせたものを使う。買ってきたばかりのなすは難しい。これは、新鮮ななすに水分が多いことと関係がある模様。

 

作り方

1.フライパンに大さじ2の油を入れて中火で加熱を開始する。
 なすは油を吸いやすいが、炒め油(界面活性剤入りサラダオイル)を使えば大さじ1でよい。油をあまり吸わず、鉄鍋にも焦げ付かないで綺麗に仕上がる。

2.油を加熱している間、お椀に切ったなすを入れ、ラップをかけてレンジで予熱する。500Wで1本あたり1.5分が目安。

なすをレンジに入れるところ

 

3.レンジで加熱したなすを、すぐさまフライパンに放り込み、皮を下にして高温の油に皮をまんべんなく触れさせ、皮に火を通す。短時間でよい。水がハネるので注意。

なすをプライパンで水煮している様子

 

4.身を下にして焼き目を付ける。

なすに焦げ目を付けている様子

 

5.焼き目がついたら完成

 皮の色がバッチリ紫色、焦げ目もついて完璧な仕上がり。放置しても色が変わったり縮んだりしない。味の素と塩を軽く振って味を調えるととても美味しい。

完成したなす

 

 

このレシピのポイント

①数日寝かせたなすを使う

 新鮮ななすは水分が多く、うまくいかないというのが今の仮説。

②レンジで予熱する

 あらかじめ予熱しておいて短時間で火を通す。

③先に皮に火を通す

 色が固定され、抜けにくくなる。

 

なぜ茶色くなってしまうのか

 なすの皮の色は下記の通り温度によって濃くなる一方であり、皮だけ剥いて焼いた場合は茶色にならない。

100℃ 薄い青
180℃ 濃い紫
240℃ 黒っぽい紫

加熱したなすが時間が経つと褐色になるのは、身から出た水分によって皮の内側に色素が溶け、身の方へ浸透して化学反応を起こした結果。これを防ぐには、真っ先に皮を加熱し火を通す必要がある。実験では100℃で色が固定されることを確認している。麺を茹でるなら、ついでに漬けると簡単である。

写真は茶色く変色した皮の表と裏。内側に色が抜けていることがわかる。表から外へヌケるわけではないので油を塗っても無駄。身が茶色になるのは、化学反応によるものとみられる。

茶色になったなすの皮茶色になったなすの皮の裏側

皮に火が通りさえすれば勝ったも同然。あとは煮るなり焼くなり、好きなように調理すればよい。とはいえ、時々うまくいかないことがある。何かまだ解明できていない現象がある模様。今後も研究を続けていく。

なすを煮ているところ

 

 

<参考購入先>
なす
窒化処理した鉄のフライパン 揚げ物には持ち手無し、手早い作業が必要な場合は持ち手付きが便利です
セラミックのフライパン フッ素コートより長持ちしますが熱伝導が悪くて使いずらいです

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<参考文献>
1.キッチンサポート青