なすを綺麗な紫色に焼く方法

なすを乗せたペペロンチーノ

なすを炒めると、皮が褐色に変色し、ヨレヨレの無残な姿になることが多い。なぜこうなってしまうのか。この原因を明らかにして、なすをフライパンで綺麗な紫色に焼く方法をご紹介する。

 

調理の問題点

 生のなすはスポンジのような構造もっており、油をよく吸うほか熱伝導率が悪い。そのため生のなすをいきなりフライパンで炒めると油をどんどん吸う上、火が通るのが遅くて調理に時間がかかる。濃い紫色だった皮は褐色になり、油を吸ってベチャベチャ。冷えると縮んでヨレヨレ。これがよくある失敗だと思う。

 これについてネットで調べると「皮に切り目を入る」「油を塗って皮から焼く」「酢や塩水に漬ける」などのうアドバイスがあるが[1]実際やってみると再現性がない。似たような記事が沢山ヒットする事からして、ほとんどが他所のコピー。化学的に原因を解明し本質を押さえた情報が見当たらない。

 写真は仕上がりの様子。左の3つは綺麗な紫色、右の3つは茶色くなった失敗例。この調理の本質を探り、左側の状態を確実に作るコツをご紹介する。

焼いたなすの例

 

作り方(2024/11/1改訂)

下ごしらえ

なすを買ってきたら、袋から出して冷蔵庫で1日以上保存(乾燥)させる。

 

塩で色を止める方法

1.食塩水(5%)に10分以上浸漬する。なすは水に浮き表面は水をはじく。皮を下にして浮かせるか、重しをのせて沈める。

5%食塩水に漬けているなす

2.よく加熱したフライパンに移し、皮から火を通す。焼きムラができないよう、箸で角度を変えながら押さえる。

フライパンでなすを焼いている様子

3.身の部分を焼く。僅かに焦げ目がつくくらいで取り出し、予熱で火を通す。

フライパンでなすを焼いている様子

最後に塩と味のもとを振って完成。時間が経っても色は変わらない。

塩と味の素を振ったなす

 なすを乗せたペペロンチーノの例

なすを乗せたペペロンチーノ

 

このレシピのポイント

①事前になすの表面から水分を減らしておく。
②焼きに時間をかけない。火を通しすぎるとヨレヨレの仕上がりになる。そのためにレンジで予熱する。
③真っ先に皮に火を通し色を固定する。

 

なぜ茶色くなってしまうのか

 なすの色素はアントシアニンによるもの。pH中性で紫。水に溶けやすい。皮だけ剥いて焼いた場合は茶色にならない。このことから、加熱によって身から出た水分により、実に含まれるクロロゲン酸などが、皮のアントシアニンと反応することで茶色になる、と考えられる[2]

 写真は茶色く変色した皮の表面と断面。内側に向けて茶色くなっている。これは、身の成分との化学反応によるもの。

茶色になったなすの皮茶色になったなすの皮の裏側

これを防ぐには、あらかじめ水分を減らすこと、高温で素早く皮に火を通し色を固定すること、が重要。

温度による色の変化は次の通り(実験結果)。100℃で色が固定され、焦げない限り、高温で色味を損なうことはない。

100℃薄い青 180℃濃い紫 240℃黒っぽい紫

さらに、食塩水に浸漬することで、変色を防ぐ[2]。塩は油の染み込みを少なくする効果もある模様。

その他、以下のプランを検討してボツとした。化学の実験や知識に乏しい料理研究家、素人の情報に注意したい。

・冷蔵庫で2〜3日乾燥したものを使う→塩水浸漬に代替、現行レシピ
・油で皮目に膜をつくる→効果なし
・酢水に浸漬→味がおかしくなる、皮の食感が落ちる
・表面のワックス除去(撥水の改善)→洗剤でゴシゴシやっても効果なし
・表面に切り込みを入れる[1]→意味なし

 

 

<参考購入先>
なす
窒化処理した鉄のフライパン 揚げ物には持ち手無し、手早い作業が必要な場合は持ち手付きが便利です
セラミックのフライパン フッ素コートより長持ちしますが熱伝導が悪くて使いずらいです

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2.ネットの情報は嘘だらけ!~役に立たないWebサイトがほとんどなのはなぜか

<参考文献>
1.キッチンサポート青
2.花王「食品の褐変とその制御」
愛知県衛生研究所 色に関する食品苦情事例の再現