PCの低騒音化

 DOS/V PCは大小いろんなメーカから売り出されている。大手メーカから、小さなショップがコツコツ手作りして通販しているものまで様々だ。しかし、同クロックの同CPUを使った完成品をみると、大手メーカ製のものは静かであり、ショップのものは音がうるさいということがしばしばある。

 ショップ手作りのものは、お客様が希望するパーツをポン付けして出来上がり、というレベルであり、それは組立を代行しているだけで、一般ユーザーの自作となんらかわりはない。しかし、騒音対策について技術のある大手メーカでは、組み立てるだけでなく、騒音のことも考えてきちんと処理しているのである。CPUの発熱対策が厳しくなった今日になって、騒音対策技術の違いが顕在化してきたといえる。

 このページでは、一般の人でも大手メーカ製に劣らないか、それ以上の静音化ができるような情報を提供している。しかし、多くの試行錯誤と出費を覚悟しなければならない。騒音対策は、時間と金がかかるものである。

 このような工夫が面倒な人は、最初から大手メーカ製商品を買ったほうが無難である。一般に、自作よりメーカ製商品を買う方が割高だが、騒音対策の手間と費用を考えれば、安いといえる。

 


 

騒音の中身を分析する

 

 騒音は、空気伝搬音と固体伝搬音の2つに分けられる。

 

(1)空気伝搬音

 音源から空気伝搬して伝わってくる騒音をいう。  CPUクーラや換気ファンを例に取ると、ケースの板を透過してくる透過音と、ドライブの隙間などから出てくる隙間音が問題になる。
 ファンの音源周波数は、ファンの羽根の数をN、回転数をP(rpm)とすると、音源の周波数fsは、

  fs=N*P/60 (Hz)

で表される。CPUクーラの場合、回転数4000rpm、羽根の数を7~11枚とすると470~730Hz、換気ファンの場合は、回転数を2500~3000rpm前後とすると、290Hz~550Hz あたりとなる。

 

(2)固体伝搬音

 加振源の振動がケースなど大きな面積の板に伝わり、その板が振動することで発生する音を言う。  加振源としては、ファンのほか、HDドライブなどがある。固体伝搬音が問題になるのは、これらの機器を外した状態では音がほとんど聞こえないが、ケースに取り付けたとたんに音が拡大される場合である。これらの加振周波数は、回転不釣り合いによるものが主因である。回転数をP(rpm)とすると、加振周波数fbは、単純に

  fb=P/60 (Hz)

となる。前述の回転数を当てはめると、CPUクーラーの場合は、67Hz、換気ファンの場合は、42~50Hz、HDドライブの場合は、回転数を5400rpm~7200rpmとすると、90~120Hz あたりに1次のピークを持つことになる。

固体伝搬音の周波数は、空気伝搬音のピーク周波数に比べると、ずいぶん低いことに気が付くと思う。ケースの騒音をよく観察すると、高い音と、ブーンという低い音の二種類あることに気が付くと思う。高い方の音は、空気伝搬音、低い方の音は、固体伝搬音である。

 


 

騒音対策

 

 騒音対策は、空気伝搬音と固体伝搬音それぞれについて考える必要がある。しかし基本は、音源対策であるから、まずこれについて述べる。

 

(1)音源対策

 音源対策とは、騒音源そのものを音の小さい物、加振力の小さい物を選ぶことである。なるべく音の小さい機種を選ぶことにより、後々の対策が楽になる。

 PCケースの中で代表的な騒音源は、ファンとHDドライブだろう。これらについて、選定上のポイントは次のようである。

1.大型で回転数が低い
2.軸受がボールベアリングではなく流体潤滑式
3.羽の形状にひねりが少なく、翼長が長い

(1)はもっとも重要である。ファンの場合は、同じ風量を得るために、小さなファンを高速で回すよりは、大きなファンをゆっくりと回した方が、騒音も加振力も小さい。薄型のファンは風量を稼ぐために高回転設計になっているものが多いから、回転数が不明確なものは、選ばないのが無難である。
 CPUファンやケースファン、電源などは、余裕をもって選びがちだが、必要以上の能力を求めると、騒音も大きくなってしまう。能力は回転数に大きく関係するので、必要ぎりぎりまで切りつめることが大切である。
 CPUファンは、ヒートシンクに温度センサを備えて、温度に応じて回転数を切り替えるほうがいい。CPUのフル稼働に備えて、つねに高速で回しているのは無駄である。マザーボード側でも供給する電圧を変えることでこのような機能は実装できそうだが、こういった商品は、まだ見あたらないようだ。

(2)流体潤滑式の軸受をもつ機器は高価だが、騒音加振力ともにボールベアリングより少ない。

(3)羽根の外見から騒音の程度を判断するのは難しい。羽根の形状に比べ、回転数のほうが騒音に対する感度が高いので、こちらを優先してほしい。

 ファンは、設置部の周辺も重要になる。ファンの前後に物体が置かれると、何もないときより騒音が増大する。それは、適当な板や手のひらを近づけることで容易に確認できる。
 通常ファンは指が入らないよう、何らかのガードを付けて使が、これを付けるとことで音が大きくなる。それは、ガードによって気流の乱れが生じ、それが音を発するからである。 ファンとガードが離れているほど、ガードに通過する流速が小さいほど、この発生音が少ない。したがって、これについても大きなファンをゆっくり回したほうがよい結果になる。

 また、同じガードでも、排気側に付けるより、吸気側に付けた方が音が大きくなる。それは、ガードによって乱れた気流を、ファンの羽根がさらに切り裂くからである。ケース内部には内臓ベイやケーブル配線があるが、CPUクーラーのファンや、ケースの排気ファンなどの近くにこれらの物体が配置されると、同じ理屈で音が大きくなる。ファンの吸気側近くには、何も置かないことが大切である。

 

(2)空気伝搬音

 空気伝搬音を対策するポイントは次の通り。

1.ケースの透過損失を増やす
2.吸音材を入れる
3.隙間を減らす
4.吸排気口のダクトに吸音処理をする

(1)透過損失は材料の密度に大きく関係する。アルミと鉄では、鉄の方が音が通りにくい。CPUクーラの周波数に対しては、同じ1tの板なら、アルミの方が7~8dBも音が大きくなる。ケースの材料は鉄とし、できるだけ板厚が厚いものを選ぶ。

(2)通常ケースの内部は吸音作用があまりなく、平行な面で反射共鳴し音が大きくなる。吸音材を貼ることで、これを防ぐことが出来る。また、ケース内部を吸音処理すると、内部の騒音レベルが下がるから、隙間からの漏れてくる音も小さくすることが出来る。

 吸音材は、入手性や施工性を考えると目の細かいスポンジが適している。吸音材は、厚みによって吸音率の周波数特性が変化する。ファンの音を吸収するためには、少なくとも20mm以上の厚みが必要である。
 吸音効果は面積に比例するが、ケース内部では、左側面板と、天板に20mmのスポンジフォームを貼ることで、十分な効果を得ることが出来る。

(3)ケースの透過損失がいくらよくても、隙間が空いているのでは音は小さくならない。隙間を埋めるには金属の粘着付きテープや、ブチルゴムなどが適当である。 実際のケースは隙間だらけで、メンテナンス性を考えるとあらゆる隙間を埋めるのは現実的ではない。現実には、(2)の吸音処理を行って内部の音を小さくしつつ、明らかに無意味な開口部を塞ぐ程度が適当だろう。もともと隙間や穴の少ないケースを選ぶこともポイントである。

(4)隙間をなくせといっても、給排気のための出入り口は開けておく必要がある。この部分は、ダクト構造を形成し、その通り道に吸音処理を施す。吸音効果は、貼り付ける吸音材の厚みと面積に比例する。  ダクトはストレートではなく、折り曲た構造「エルボという」にすると、非常に漏れ音が少なくなる。

 PCケースのフロントをみると、吸気のための開口部がファンのすぐ前にあいているものと、ファンの目の前がメクラ板になっていて、吸気口はどこか別の場所にあいているものがあるが、音についていえば、後者の方が有利である。特に、ファンを取り付けるフロントフレームと、着脱可能なフロントパネルとの間の空間が大きいものほど、吸音対策がしやすいから、このようなケースを選ぶのもポイントである。

 

(3)個体伝搬音

 固体伝搬音の対策は、ゴムなどを使った加振源の振動絶縁と、加振源からの振動がフレームや板に伝搬して振動することに対する制振の2つがある。

・振動絶縁

 加振源の振動絶縁は、根元対策であり、第一に考えなければならない。
 振動絶縁を考える場合は、ゴムを取り付けたときの固有振動数fvsを知る必要がある。振動体の質量をm(kg)、防振ゴムの動的ばね定数をk(N/m)とすると、

fvs=SQRT(k/m)/(2*π)  (Hz)

 加振源の振動周波数をfv0とし、その比率を

C=fv0/fvs

とすると、振動絶縁として効果を発揮するためには、Cは1.4以上でなくてはならない。Cは大きいほど絶縁効果が高く、一般には、C=2以上が望ましい。Cが1.4を下回ると、共振によりかえって振動が増大してしまう。
 ケースファンの加振周波数は、上記で述べたように、60Hz前後だから、これをケースと振動絶縁するには、ファンを取り付けた状態で、固有振動数が30Hz以下である必要がある。
 この理屈を全く考えずに、単にゴムを挟んだとか、振動対策に効果があるとかいう市販の防振ワッシャを挟んだだけでは、全く効果がないか、悪くすると共振させてしまう恐れがある。
 ファンの加振周波数は結構低く、ファンの質量も軽いので、これに対する防振ゴムは、相当柔らかいものでなければならない。現実にはkを求めることが困難であるが、市販されている商品の中では、ゴム製のブッシュが使えそうである。

 ゴムブッシュが固すぎて効果が不足する場合は、mを増やすことに目を向けるといい。式をみてわかるように、mを増やしても固有振動数を下げることが出来る。
 ファンには金属フレームの物があるが、重いという点で、防振に有利である。プラスチックフレームの場合は、外周部に板鉛(釣具として売られている)を巻くなど、おもりを付け足すといい。
 いくらいい防振材料を使っても、固体接触の部分があると、効果がないから注意して欲しい。

 機器を取り付けた状態の固有振動数を知るのは、測定器がないと難しいが、HDドライブの場合は、ゴムがHD自身の自重で4%以上つぶれて、指で押して上下左右に動くこと、ファンの場合は、10%以上つぶれてフラフラの感じになっていることを目安とすればいい。上記のつぶれ率は、振動伝達率を1/10(C=3.3)程度にするための目安である。  柔らかいゴムを使ってつぶれ量を増やせばいくらでも防振効果はあがるが、つぶれ率が25%を超えるような使い方をすると、ゴムがすぐダメになるので注意して欲しい。
 また、通常ゴムが使えるのは40deg以下の環境であり、CPUファンなど温度条件が厳しいところには、シリコンゴムを使う必要がある。

 

・板の制振

 ケースの側板に手のひらを当ててみて、振動が大きいと感じられる場合は、制振を検討するといい。

 板の制振は、制振材を貼り付けることによって実現できる。制振板は、貼り付ける板に対して、同程度の面密度、あるいはヤング率(剛性)をもったものが必要になる。紙やスポンジを貼り付けただけでは、制振効果はあまり期待できない。

 制振材は、鉛板、ステンレス板、鉄板、銅板など、比重の高い金属板が適当である。切るのにコツがいるが、ガラス板も使える。一般には売っていないが、鉛の粉末と樹脂をブレンドした専用の制振シートも存在する。

 制振材の板厚は、元の板厚に対して20%以上ないと効果が少ない。板厚が厚いほど、貼り付け面積が広いほど、制振効果は高くなる。効果が不足する場合は、板厚を増やすことでいくらでも効果を高めることができる。

 制振材は、エポキシ樹脂や瞬間接着剤などで堅固に接着せずに、ゴム系の接着剤や、粘着材、両面テープなどで貼り付けた方が高い効果が得られる。それは、板が振動(曲がった)際に、板と板の間にある粘着層の中で摩擦損失が生じ、ダンピングが得られるからである。制振鋼板も、同じ原理によりダンピングを得ている。

seisin1 写真は、0.6tの側板に0.1tのステンレスシートを貼り付けたものである。このシートは台所用として売られているもので、粘着付きだから施工は切って貼るだけで終わる。何も貼らないときは、たたくとゴンゴン鳴っていたが、貼ったあとは全く響かない。

 板の制振を考える以前に、もともと振動しにくいケースを選ぶことが大切である。ポイントとしては、

1.板厚が厚いもの
2.側板が厚手のプラスチック製のもの 3.同じ大きさなら、重いもの

などがある。

(1)板厚が厚いほど、同じ加振力でも振動振幅が小さい。同じ板厚なら、アルミより鉄の方がいいのは言うまでもない。

(2)は大手メーカー製の商品にみられる。プラスチック製だが結構重い。プラスチック板は内部損失が大きく、鉄より共振しにくい材料である。しかも大抵金属のシールド材が内側に貼り付いているので、これによるダンピングも効いて、かなり振動に強い。このような材料のケースが見つかれば、鉄板よりもお勧めである。

 

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