【2020年版】掃除機の選び方~紙パック サイクロン コードレスのメリット・デメリットを詳しく解説

 サイクロンを買うと意外な問題に気付く。「すぐゴミ捨てが必要」「捨てるとき埃が舞う」紙パックはパンパンになるまで使えて一杯になったら捨てるだけだった。コードレスにも「吸引力が弱くて仕事がはかどらない」という不満がある。今回はそんな結果にならないための掃除機の選び方をご紹介する。

 

仕事率に注目する

 カタログを見ると掃除機の性能に仕事率(吸込仕事率)という項目がある。これは負荷に対する余裕、クルマで言えば「排気量」に相当するもの。

 仕事率が大きいほど、フィルターの目詰まりに強く、ゴミが溜まったときの吸引力の低下が少ない。家庭用掃除機の仕事率の最低値の目安は350W。このくらいあれば、使っていて不満を覚えることはないはず。

 ゴミをピックアップする能力はノズルの性能も関係する。仕事率が高いほどゴミがよく取れるわけではないが、仕事率は高いに越したことはない。

 

問題だらけのサイクロン式

 サイクロンとは、フィルターを使わないで粉塵を遠心分離して捕集する仕組み。そのサイクロンにフィルターが付いていて、それが頻繁に目詰まりするということは、サイクロンが機能していない証拠。

 その目詰まりを防ぐため、国内メーカーではセルフクリーニングの機構を設けたり、フィルターの多段にするなどの工夫をしている。まさに本末転倒。サイクロンがまともに機能する掃除機は、ダイソンくらい。

 欠点は、ゴミが圧縮されないのでゴミ捨ての頻度が高い、捨てるたびに細かい粉塵が舞い散る、定期的なフィルターの清掃と本体の分解掃除が必要なこと。

完成の域にある紙パック式

 昔からある紙パック式は完成の域にある。紙パック自体の性能(捕集率)も十分なレベルにある。

 紙パックを仕事率が十分高い本体と組み合わせた結果は、皆さんが経験している通り。

 紙パックに入ったゴミは後から入ってくるゴミによって圧縮されるから、とても多くのゴミを貯められる。パンパンになってもほとんど吸引力が落ちないため、気づかずに使い続けてしまうことも多い。

 メンテナンスは、いっぱいになった紙パックを捨てるだけ。欠点は、消耗品(紙パック)が必要なことくらい。

 

コードレスの限界

 最近二次電池が進歩したおかげでコードレスが増えている。最大の問題は仕事率が低いこと。ACコード式の1/5~1/10しかない。

 そのため、吸引力が低下しやすく掃除がはかどらない。メインの掃除機として使うのはムリがある。コードレスは補助的にちょっと使うものと考えたい。


 

過去の実例

 

コードがゼロ VC-M1X(東芝 2002年) 

東芝掃除機 VC-MX1

VC-MX1 (2002年) 出典:東芝HP

 コードレスサイクロン掃除機(購入)。サイクロンとは名ばかりで、ゴミが回転するだけ。それも綿棒1本吸っただけで機能しなくなった。

 遠心分離などするはずなく、排気フィルターがすぐ目詰まりした。そうなると500円玉はおろか、米粒を吸うにも苦労するありさま。そうなるのを防ぐために、頻繁なゴミ捨てとフィルターの清掃が必要だった。

 付属ノズルは三段延長式だが継ぎ目にスキマがあり、少ない吸引力がさらに落ちる代物だった。

 

 もともと仕事率の低いコードレスにサイクロンの組み合わせは成立しずらい。コードレスのサイクロンに安易に手を出さないよう注意したい。

 

風神 TC-ZK20S (三菱 2010年)

 
 
三菱掃除機 風神 TC-ZK20S

風神TC-ZK20S 出典:日経トレンディネット 2010.7

 「本当の」サイクロン掃除機という触れ込み[1]。今までのサイクロンが「まがいものだった」ということ?

 この商品の特徴は「フィルターが付いてない」こと。これはサイクロンがきちんと機能するよう作られている証拠。

 本当のサイクロンを積んだ結果、本体がかなり大きくなってしまった。ダストボックスに貯められるゴミも少ない。

 

 部品を全部分解して水洗いできるというが、紙パック式では水洗い自体必要ない。そうまでしてサイクロンにこだわる必要があるのか。同じ大きさで紙パック式を作れば、ずっと良いものが出来るのではないか。

 

ハイブリッド掃除機 MC-HS700G-S (パナソニック 2013年)

パナソニック掃除機 MC-HS700G-S 

MC-HS700G-S 出典:パナソニック商品カタログ

 コードレスとACの両方で使えるようにしたのが売り。こういうのはハイブリッドと言わず「2WAY電源」と言って欲しい。

 サイクロン式で外観はダイソンそっくり。ゴミの圧縮機能を備え、騒音低減にも配慮するなど、設計もダイソンをかなり意識している。

 

エルゴスリーマルチフロア (エレクトロラックス 2013年)

エレクトロラックス掃除機 エルゴスリーマルチフロア( 紙パック式。本機には国産機やダイソンにない特徴がある。それは、「騒音」が圧倒的に小さいこと(公称43dB)。

 「掃除機は騒がしいもの・・」これまでは、奥様が掃除機をかけている間、住人は終わるのをじっと我慢しなければならなかった。

 騒音対策がしっかりした掃除機は大きいが、リビングでテレビを見ている旦那のそばでも使える静かさを獲得している。「音」というのは掃除機にとって重要な商品価値の一つに違いない。

 

 

マキタ 充電式クリーナー  CL142FDZW

マキタ掃除機 CL142FDZW

 「使える」コードレスとして根強い人気がある。もともと工事現場の清掃用だが、その性能が評価され家庭用にもよく売れている。

 作りが堅牢なうえ、仕事率は30W前後。気になるところをちょっと掃除する用途に役立つ。

 

 値段のほとんどはバッテリと充電器分。バッテリが同社の電動工具と共用できる点がうれしい。先に電動工具を買えば、掃除機本体だけを安く買える[2]。掃除機を先に買った場合は、後から電動工具を安く買える。

  ラインナップは豊富で、紙パックとカプセル式、電池も14.4Vと18Vがある。他、オプションのフレキシブルホースがあるとクルマの室内清掃に便利。類似商品が日立工機からも出ている。

 詳しい記事を関連記事4にまとめた。

 


 

結論~掃除機は紙パック式がベスト

 2020年のお勧めは次の通り。

ACコード式は、エレクトロラックスのエルゴスリーシリーズ

コードレス式は、マキタの CL182FDシリーズ(詳細は関連記事4を参照)

 

最後に

 ダイソンの宣伝はハナにつく。

 「世界中のどの~よりも」「吸引力が変わらないただ一つの~」

こういうセールストークは消費者に誤解を与える。限定した条件(比較)でしか成り立たない事を、全てそうであるかのようにいうのは問題だ[3]

 国内メーカーは皆、そんなダイソンを横目で見てヘンテコなサイクロンを作っている。ダイソンなど放っておいて「紙パック」で消費者のニーズに応える、まっとうな商品を計画してもらいたい。

 

<参考購入先>
ダイソンの掃除機

<関連記事>
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4.ダイソンをぶっ飛ばす!~最強コスパのコードレス掃除機を徹底レビュー
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<参考文献>
1.国内メーカー初“本当の”サイクロン掃除機の切り札は? 日経トレンディネット 2010.7
https://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100715/1032390/

<改定履歴>
2018/1/3 散在する掃除機関係の記事を本記事にまとめました。