サイクロンを買うと意外な問題に気付く。「すぐゴミ捨てが必要」「捨てるとき埃が舞う」紙パックはパンパンになるまで使えて一杯になったら捨てるだけだった。コードレスにも「吸引力が弱くて仕事がはかどらない」という不満がある。今回はそんな結果にならないための掃除機の選び方をご紹介する。
仕事率に注目する
カタログを見ると掃除機の性能に仕事率(吸込仕事率)という項目がある。これは負荷に対する余裕、クルマで言えば「排気量」に相当するもの。
仕事率が大きいほど、フィルターの目詰まりに強く、ゴミが溜まったときの吸引力の低下が少ない。家庭用掃除機の仕事率の最低値の目安は350W。このくらいあれば、使っていて不満を覚えることはないはず。
ゴミをピックアップする能力はノズルの性能も関係する。仕事率が高いほどゴミがよく取れるわけではないが、仕事率は高いに越したことはない。
問題だらけのサイクロン式
サイクロンとは、フィルターを使わないで粉塵を遠心分離して捕集する仕組み。そのサイクロンにフィルターが付いていて、それが頻繁に目詰まりするということは、サイクロンが機能していない証拠。
その目詰まりを防ぐため、国内メーカーではセルフクリーニングの機構を設けたり、フィルターの多段にするなどの工夫をしている。まさに本末転倒。サイクロンがまともに機能する掃除機は、ダイソンくらい。
欠点は、ゴミが圧縮されないのでゴミ捨ての頻度が高い、捨てるたびに細かい粉塵が舞い散る、定期的なフィルターの清掃と本体の分解掃除が必要なこと。
完成の域にある紙パック式
昔からある紙パック式は完成の域にある。紙パック自体の性能(捕集率)も十分なレベルにある。
紙パックを仕事率が十分高い本体と組み合わせた結果は、皆さんが経験している通り。
紙パックに入ったゴミは後から入ってくるゴミによって圧縮されるから、とても多くのゴミを貯められる。パンパンになってもほとんど吸引力が落ちないため、気づかずに使い続けてしまうことも多い。
メンテナンスは、いっぱいになった紙パックを捨てるだけ。欠点は、消耗品(紙パック)が必要なことくらい。
コードレスの限界
最近二次電池が進歩したおかげでコードレスが増えている。最大の問題は仕事率が低いこと。ACコード式の1/5~1/10しかない。
そのため、吸引力が低下しやすく掃除がはかどらない。メインの掃除機として使うのはムリがある。コードレスは補助的にちょっと使うものと考えたい。
実例
コードがゼロ VC-M1X(東芝 2002年)
コードレスサイクロン掃除機(購入)。サイクロンとは名ばかりで、ゴミが回転するだけ。それも綿棒1本吸っただけで機能しなくなった。
遠心分離などするはずなく、排気フィルターがすぐ目詰まりした。そうなると500円玉はおろか、米粒を吸うにも苦労するありさま。そうなるのを防ぐために、頻繁なゴミ捨てとフィルターの清掃が必要だった。
付属ノズルは三段延長式だが継ぎ目にスキマがあり、少ない吸引力がさらに落ちる代物だった。
もともと仕事率の低いコードレスにサイクロンの組み合わせは成立しずらい。このような構成の商品には安易に手を出さないよう注意したい。
風神 TC-ZK20S (三菱 2010年)
「本当の」サイクロン掃除機という触れ込み[1]。今までのサイクロンが「まがいものだった」ということか。
この商品の特徴は「フィルターが付いてない」こと。これはサイクロンがきちんと機能するよう作られている証拠。
本当のサイクロンを積んだ結果、本体がかなり大きくなってしまった。ダストボックスに貯められるゴミも少ない。
部品を全部分解して水洗いできるというが、そうまでしてサイクロンにこだわる必要があるのだろうか。同じ大きさで紙パック式を作れば、ずっと良いものが出来そうだ。
ハイブリッド掃除機 MC-HS700G-S (パナソニック 2013年)
コードレスとACの両方で使えるようにしたという。こういうのはハイブリッドと言わず「2WAY電源」と言って欲しい。
サイクロン式で外観はダイソンそっくり。ゴミの圧縮機能を備え、騒音低減にも配慮するなど、設計もダイソンをかなり意識している。
エルゴスリーマルチフロア (エレクトロラックス 2013年)
紙パック式(購入)。本機には国産機やダイソンにない特徴がある。それは、「騒音」が圧倒的に小さいこと(公称43dB)。
「掃除機は騒がしいもの・・」これまでは、奥様が掃除機をかけている間、住人は終わるのをじっと我慢しなければならなかった。
皆が欲しい掃除機は、サイクロンとかではなく音が気にならないモノではないか。
この掃除機は騒音対策がしっかりしているため、やや大きく重い。その代わり、リビングでテレビを見ている旦那のそばでも使える静かさを獲得している。
マキタ 充電式クリーナー CL142FDZW
「使える」コードレスとして根強い人気がある。もともと工事現場の清掃用だが、その性能が評価され家庭用にもよく売れている。
作りが堅牢なうえ、仕事率は30W前後。気になるところをちょっと掃除する用途に役立つ。
値段のほとんどはバッテリと充電器分。バッテリが同社の電動工具と共用できる点がうれしい。先に電動工具を買えば、掃除機本体だけを安く買える[2]。掃除機を先に買った場合は、後から電動工具を安く買える。
ラインナップは豊富で、紙パックとカプセル式、電池も14.4Vと18Vがある。お勧めは紙パック式の14.4V。本体の掃除が必要ないうえ、電池が共用できる電動工具の種類が多い。
他、オプションのフレキシブルホースがあるとクルマの室内清掃に便利。
類似商品が日立工機からも出ている。性能値段に大差なく、電池を電動工具と共用できる点も同じ。
結論~掃除機は紙パック式がベスト
結局、次の条件を満たすものを買えばよい。
・紙パック式
・低騒音(できれば40dB台)
・ACコード式
エレクトロラックスのエルゴスリーがこれをすべて満足する。コードレスはマキタか日立工機で決まり。
最後に
ダイソンの宣伝はハナにつく。
「世界中のどの~よりも」「吸引力が変わらないただ一つの~」
こういうセールストークは消費者に誤解を与える。限定した条件(比較)でしか成り立たない事を、全てそうであるかのようにいうのは問題だ[3]。
国内メーカーは皆、そんなダイソンを横目で見てヘンテコなサイクロンを作っている。掃除機にサイクロンがベストとは限らない。ダイソンなど放っておいて「紙パック」で低騒音を追求して欲しい。
<参考購入先>
ダイソンの掃除機
<関連記事>
1.国内メーカー初“本当の”サイクロン掃除機の切り札は? 日経トレンディネット 2010.7
https://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100715/1032390/
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<改定履歴>
2018/1/3 散在する掃除機関係の記事を本記事にまとめました。