JRX115は最強のスピーカーか!?~家庭で使えるSR(PA)スピーカーの選び方

 サイキョーを連呼する某サイトでJBL JRX115をHi-Fi用途に強く推奨している※1。これはSR用(コンサートホールやイベント用)のスピーカー。ユニットの構成は15インチ(約38cm)ウーファ+ホーン。民生用でこういうシステムは、一部の高額商品を除き存在しない。

※1:2017年、某サイト主人の推奨はエレクトロボイスTX1152。JRX115はJRX215にモデルチェンジしている。

 JRX115のようなスピーカーはプロ用機器を扱うショップでなければ絶対に出てこない選択肢であり、民生機器しか見てこなかった人にとっては盲点。このスピーカは能率が98dBもあるから、アンプのパワーは20Wあれば十分となる[1]

 

 このような高能率スピーカは過渡応答に優れ、細やかな情報を描き出す。能率が90dBを下回るような低能率のスピーカでは絶対に得られない音が出る。

 聴感上は「生々しい」「明瞭」「音離れがよい」と感じるだろう。私がオーディオに興味を持ったきっかけも、手を伸ばせば掴めそうなくらいのリアルな音像体験にあった※2

 

※2:私が学生のころ、オーディオショップで聞いてショックを受けた音がこれだ。タンノイのアーデンかバークレイだったと思う。オペラが鳴っていて、そこに本当に人がいるかのようだった。

 左はその当時のカタログ。タンノイのアーデンとバークレイ(1981年5月 ティアック)

 

 

高能率スピーカーの欠点

 高能率なスピーカーは、軽い振動板を使って中高域の能率を追求している。その結果、中高域が強く張り出した音色のものが多く、低音が出ない。大きいウーファーが付いていても、低域が伸びていない。Hi-Fi用途ではサブウーファーの追加が必要になる。

 元々サブウーファーとセットで使うホームシアターでは、小型SR用がメインスピーカーの最適な候補になる[3]

 JRX115のような中型スピーカーではツイータを耳の高さに持っていくための「台」も必用になる。

 ウーファが2連のJRX125(現在はJRX225)を選ぶとフロア型となって台が不要になるが、下のウーファからも中域が出てしまうためこの対処が難しく、一般の室内では使いにくい。

 

SR用スピーカーの候補

 下の表は、15インチ+ホーンを中心にJRX115と似た構成のスピーカを並べたもの。能率100dB近いものが多い。民生機器では低音を出さないといけないから、94dBくらいが限度のようだ。

 

SR用スピーカーの候補(2010年4月調べ)

srsp

 

 SR用はパンチングメタルが全面を覆うものが多い。音に悪影響すると思って取ると見た目が悪くなる。

 ヤマハConcert Club VシリーズやエレクトロボイスSX300シリーズなど一部の商品はホーン正面にパンチングメタルがない。パンチングメタルを気にする人もいるが、目が波長に対して十分小さい場合ほとんど影響ない。

 一番下の3つはJBLのホームオーディオシリーズ。14インチでは能率が低い。S3100は私が使っている機種。2018年の現行機でこれに相当する機種はS4700。長いことこのクラスに能率94dのSPが無かったが、やっと同等のものが登場した。民生機種ではS2700が現在唯一の候補になる。

 

周波数特性に注意

  SR用スピーカーは能率優先で設計されていて周波数特性にうねり(クセ)のあるものが多い。これがSR用をHi-Fiや鑑賞に転用した際に違和感を覚える要因になっている。Hi-Fiや鑑賞用ではできるだけ特性がフラットなものを選ぶ必要がある。

 特性がフラットなものを選ぶための第一の注目点はホーンの形状。ホーンの途中に段差がないこと、ホーン出口端がバッフル面と滑らかに繋がっていることに注目したい。この点でいくと某サイトの主人が薦めるTX1152はサイキョーに見えない。

 HI-Fi製品の金属ホーンでは「鳴き」を抑えるためダンプ剤が塗布されるが、SR用ではほとんど注意を払われていない。ホーンを叩いて響く場合は、DIYでデッドニングする必要がある[7]

 

SX300の周波数特性 出典:データシート

 エレクトロボイスSX300の周波数特性。ハイ上がりで高域に山谷がある。インピーダンス特性にも高い山が見られこの部分の過渡応答が気になる。

 高域の起伏はホーンの途中に段差がついているせいか。SR用なら問題ないが、音楽再生は落ち着かない音になっている可能性がある。

 

ヤマハS115Vの周波数特性 出典:データシート

 ヤマハS115Vの周波数特性。滑らかなカーブのホーンを搭載してモニタースピーカーのように特性がフラット。Hi-Fi用途でも問題なさそう。

 弟機のS112Vも同様にフラット。SR用でも特性は妥協しない。マジメなモノづくりが伺える。

 

 

SR用に組み合わせるサブウーファーの候補

 ここはDクラスアンプで駆動する出来るだけ大型のユニットを使った機種が適している。

 SR用サブウーファーは18インチ(口径46センチ)の大型もあるが、LR信号ミックス機能のないパッシブタイプが多く使いにくい。

 一応BEHRINGERに候補がある。例えばVQやBシリーズはDクラスアンプのほかハイパスフィルタを搭載し民生品のような使い方ができる。

 民生用ではヤマハNS-SW300B(口径25cm、250W)か、DALI SUB12F が候補になる(口径30cm、220W)。

 

サブウーファーはクロスオーバーさせて使う

 メインスピーカーの低域をカットせずにサブウーファーを追加すると音が干渉して良い結果が得られない。サブウーファーを入れる場合は、必ずメインスピーカーの低音をカットしてクロスオーバーさせたい。

 メインスピーカーの低音をカットすると次のような多くの利点がある。

 耐入力が増る
 歪が減る(ウーファーの振幅が減るため)
 アンプ側の負担が減る
 箱鳴りによって生じる雑音が減る
 周りのものを振動させにくくなる
 定在波の影響が軽減される(設置が容易になる)

 

アンプ選びの課題

 サブウーファーを追加でき、メインSPの低音をカット(クロス)できる機能を持つアンプを選ぶ。

 このようなことができるアンプは、AVアンプか、一部のHi-Fiアンプしかない(2018年現在、マランツのM-CR611がこれに対応している。サブウーファー端子を持ち、メインスピーカーの低域カットが可能)。

 デジタル処理が普通になった今、サブウーファーとのクロスオーバーやレベル調整などは全部デジタル処理の一環でやってしまいたい。

 AVアンプはこれが普通にできるが、Hi-Fiオーディオアンプでこれができる商品がほとんどないのが残念なところ。

 


 

まとめ

 Hi-Fi用に使えるSRスピーカーは次から選びんでサブウーファーとセットで使ってください。今まで体験したことのない音が聴けるはず[2]

候補1:ヤマハ S112V

 12インチウーファー+2インチドライバーで能率97dB、20.8kg。15インチのS115Vより高応答が望めます[6]。ツイーターが2インチの為、高域の伸びが控えめ。ホームシアター用なら問題ない。

候補2:ヤマハ CBR12

 12インチウーファー+1.4インチドライバー、能率96dB、13.9kg。Hi-Fi用ではこれが一番かもしれません。

 

サブウーファー候補1:EUROLIVE B1500XP

 15インチ、Dクラスアンプ、3000W。LR信号ミックス搭載。アンプのLFEかLRラインアウトをXLRに変換して接続する。変換アダプターを使用。

サブウーファー候補2:EUROLIVE VQ1500D

 B1500XPとの違いは値段と出力(500W)。ローエンドの伸びが控えめ、ホームシアターに向く。

 

 

 SR用スピーカーは裸電線を挿すような結線はできません。

 配線材としてスピコンが必要(どちらもNeutrik NL4Fx。末尾Fcは旧製品)。

 ケーブルはカナレ4S8が定番ですが適当なキャブタイヤケーブル(2スケア2芯)をホームセンターの切り売りなどで買ってもOKです。

 

 

 サブウーファーを使わない場合はJBL S4700 (15インチ、能率94dB、2018年)が唯一の候補になります。

 スピーカー台は、組立式のスチールラックがベスト[5]。例えばこちらの商品がマッチします。足は円形アジャスターに交換してください。

 


 

おまけ~某サイトの記述の正しさ

 サイキョーを連呼する某サイトの技術的解釈や考察は間違いだらけ。しかし何故か最終結論は正しいものが多い。私はこのサイトを見て、経験と観察だけでも正しい答えを導き出せることを知った。

(2008/2/9 追補)
 JRX115に適当なスピーカスタンドが無いのが課題だったが、某サイトの主人が解を見つけた。理屈の説明は相変わらず無茶苦茶だが、コーナに配置してツイータの軸線をずらすことでJRX115の弱点である低域の弱さと高域のキツさを同時に解消できるのは確か。3次元的に自由なセッティングが可能なスタンドはユニークで評価できる。

 

<参考購入先>
JBL JRXシリーズ JRX215はJRX115の後継機です
サウンドハウス こちらからも購入できます

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