E-M10 Mark IIIレビュー~オリンパス一眼カメラの魅力を解説

オリンパスE-M10MarkIII 

 E-M10markIII。一眼を手元に置くのはニコンFE-2以来、34年ぶりのこと。実際に手にしてわかった、オリンパス一眼の魅力をご紹介する。

 

非常に軽快な動作

 動作が非常に軽快でサクサク動き、小気味よく撮影できる。AFを開始してから実際にシャッターが切れるまでがとても速い。本機の特徴の一つであるタッチ撮影も、同種の機能を持つ他社製品に比べて動作が俊敏に感じる。

 サクサク動くのは、本機に搭載されたTruePicVIII(4コア4GPU[1]])のおかげ。これは同社フラッグシップ機E-M1 markIIに乗るものと同じ。これをE-M10に乗せた様子は、まるで軽いボディに強力なエンジンを乗せたスポーツカーのよう。

 

「出来る」と「使える」は違う

 オリンパスのカメラには、家電メーカーが作るカメラとは違った作り込みの良さが感じられる。「出来る」と「使える」は違う。オリンパスは重要な機能を「使える」レベルに作り込んである印象だ。

 例えば、レスポンスの良いタッチ撮影機能は、動き回る子供をターゲットに作り込まれた様子が伺え、小さなお子さんの撮影に「使える」機能になっている。

 PモードでプログラムをダウンシフトするとISOと絞り、シャッター速度が連動して変わっていく。こうなってほしい!と思う通りに動く「使える」プログラムシフトになっている。

 画面全体に大きく拡大するMFアシストのおかげでMFが「使える」機能になっている。

 

 作り込みには「深さ」もある。それは、初心者のうちはわからないかもしれない。自分の上達に伴ってわかってくること。「こうしたい」と思った時、既にそれが高いレベルで用意されていると「おお、よく考えて作ってあるな」と感動するものだ。

 カメラを選ぶとき、スペックの比較表を参考にすることが多い。しかしこういった「作り込み」はスペック表からは見えない。

 

良く考えられたボディ

 量販店に置いてある本機はシルバーが多い。これまで何度か手に取ってみたものの、安っぽく感じて好きになれなかった。初めて見るブラックはなかなかよい。家電メーカーが作る家電カメラとは質感が違う。さすがカメラメーカーが作るボディは違う。

E-M10mark IIIの軍艦部

 ボディはプラスチックだが、ダイヤルなどの操作に金属感があって操作感がよい。おもわずいじりたくなる、メカ好きの男心をくすぐるカメラだ。布団に入って好きなアイテムをいじりまわす。子供の頃やっていたことを、今頃になって思い出した。

 ボディがプラスチックであることをマイナスに捉える人がいるかもしれないが、私はむしろ歓迎だ。プラスチックは落下衝撃に強い。高強度のエンプラボディは、重いうえに割れのリスクがあるダイキャストボディより良い思っている。少なくとも、落下一発で歪んでしまうペナペナの金属ボディよりはるかによい。

 

動画AFは自然な動き

 私はこのカメラを動画撮影のために購入した。動画のC-AFはゆっくり自然な動作を目指した印象。その動作には過去のOM-D Movie 開発の経験が生かされている模様。

 AFの感度は調整できないが、シャッターと絞りを自由に組み合わせたマニュアル撮影が可能になっている。

 但し動きものに対する追従性は低く、小動物を追いかける能力はない。このあたりの性能はソニーの方がずっと優れている[2]

 

 

カメラが売れない・・こだわりすぎが仇に?

 オリンパスのカメラ事業は厳しい状況にあるという[3]。本機はボリウムゾーンの一つ、子供を持つパパママをターゲットに企画された商品だが、あまり売れていないらしい。

 小型軽量でサッと持ち出せて、タッチシャッターで子供を確実に捉える。300mm相当の望遠とファインダーにより、明るい屋外の運動会でもバッチリ。体育館で行われる室内競技もOK[4]。機能性能は十分のはずなのに、どうして売れないのか。

 理由はいくつかあると思う。私は店頭で、このカメラを見に来た若い主婦を見たことがある。

 

 「これで子供を撮りたいんですけど、どうなんでしょうか」

 そこにいる店員がこう言った。

 「それならソニーがお勧めですよ、なんといってもこの連写、すごいでしょう」

 カシャカシャカシャ・・・

 「オリンパスの方はどうなんでしょう、主人がこっちの方がカメラっぽくていいって言うんですけど」

 「いやもう、断ン然!ソニーがお勧めっす」

 カシャカシャカシャ・・・

 そんなやり取りがしばらく続いたあと、結局そのお客さんは何も買わずに帰ってしまった。そのとき私は、こう言い出しそうになっていた。

 「アナタ、今のお客さんはオリンパスを買いに来たのではないですか?ちょっと背中を押してあげれば、そのまま買って帰ったと思いますよ」

 

 私的には、設計者のこだわりが邪魔をしているように見える。このカメラ、パッとみた感じはパパママ向けではなく写真にこだわるアマチュア向け。実際の中身もそのように内容が濃く、使い勝手はE-M5に近い。

 私などはこれで満足だが、カメラのことをよくご存じないパパママからみると、いろいろボタンがたくさんあって「難しそう」と感じさせるかもしれない。

 メカに興味のない主婦からすれば、簡単にキレイに撮れることが重要。シャッターボタン1つあれば、それで十分に違いない。

 

<参考購入先>
E-M10markIII

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<参考文献>
1.TruePic https://en.wikipedia.org/wiki/TruePic (リンク切れ)
3.トップシェアすら大苦戦するカメラ市場に明日はあるのか bcnretail.com