口径10cmクラスの小型スピーカーが人気だ。DALIのSPEKTOR1やPICOがよく売れているという。しかし出てくる音は暗く元気がない。これは能率の低いスピーカーに共通する特徴。そこで以前から目をつけていたSR用の小型SP(Classic Pro CS104)を買ってみた。
写真はCS104。これは元々、ホームシアターのリアスピーカーにマシなものが一つもないという、困った状況を打破できる唯一の商品と見込んでいたもの[1]。
これにサブウーファーを追加すれば、Hi-Fiシステムとして通用するかもしれない。今回これにトライして、予想を超える結果が出たのでご紹介したい。
Classic Proとは何か
プロ用音響機器を手掛けるサウンドハウスのオリジナルブランド。信じられないような低価格だが、中身は決して手を抜いていない。プロの使用に耐える堅牢な作りになっている。
CS104を調べる
購入したCS104。正面のサイズはDALIの SPEKTOR1 や PICO とほぼ同じ。奥行だけ5センチ小さい。
重さは実測2.6kgでSPEKTOR1と同じ。持ち上げると石の塊のように感じる。
壁付用Lブラケットが付属する。厚みは2mmあり腕の力では曲がらない。左下に見える丸い部品はブラケットと本体の間に挟むためのゴムスペーサ(材質は臭いからしてNBR)。片側に両面テープが貼られている。
パンチングパネルの内側に薄いスポンジが貼ってあり中が見えない。
パネルを外してみたところ。ソフトドームと10cmコーンの2way。何の加飾もない、実質剛健の作り
ねじを外したときの屑からすると、キャビネットの材質はMDFのモールド成形の模様。
裏側はスピコンと端子台。それぞれ2セットあり、回路が並列になっていてどちらに繋いでも音が出る。裸電線は端子台に付けられる。
付属の仕様表。能率87dB、入力40Wrms、最大160W入る。普通の使い方では、まず壊れないとされるBOSE101(45Wrms、150Wpeak)とほぼ同じスペック。
出力音圧、歪率、インピーダンス特性のグラフがある。出力音圧特性にアバレがあるが、凹凸の様子からして何かの共振に見える。おそらくフロントグリルが原因。
フロントグリル内側に貼られている薄いスポンジはその対策かもしれない。
実際の出力音圧特性。ほぼフラットでたいへん優秀。JBL Control1と違ってクセがない。
低音は125Hzまで。それ以下はストンと落ちている。サブウーファーと組み合わせる場合のカットオフは120Hz以上。これができるのはAVアンプしかない。
実際のインピーダンス特性。f0c(ウーファーの最低共振周波数)は170Hz、ポートの共鳴は100Hzの設計。
1kHz付近に見られるピークはツイーターとのクロスオーバによるものだが、山が歪んでいる。吸音材を追加すれば消えそうだが、このままでも問題ない。
能率のランク
以前ご紹介した能率の比較グラフ[2]。左端にあるのがCS104。
中能率の部類に入る。SPEKTOR1とは5dB以上違うので、アンプの出力は半分以下で済む。これは同じ音量の音をより歪少なく再生可能であることを意味する。
台の高さはどのくらい必要か
PCオーディオではこの種のスピーカーを机の上に設置するが、ポン置きすると机の反射音とスピーカーから出た直接音が干渉して特性が乱れ、音色がおかしくなる。この干渉はスピーカーを机から離すと減る。つまりこの種のスピーカーを机の上に設置する場合は、必ず台かスタンドが必要になる。
しかし、台の高さをいくつにしたらよいのかがわからない。そこで、干渉の影響が十分小さくなるために必要な台の高さを実験で求めてみた。
実験方法
下からレンガ(高さ6cm)を積み上げていって、ツイーター軸上の出力音圧特性の変化を見る。
実験結果
ベタ置きすると中域に深い谷が出来る。これはテーブル反射音との干渉によるもの。音も明らかに変に聞こえる。
レンガを積んでいくと、この谷が低域にシフトし、同時に小さくなっていく。レンガ3段(18cm)で目立たなくなる。
下の「十分高い」は、45cm離した結果。完全にフラットにするためには、ここまで離さないといけない。
この結果から、台の高さは少なくとも18cm以上(机からウーファーのセンターまで25cm以上)必要なことがわかる。このことはCS104に限らず机の上に置くスピーカーすべてにあてはまる。
スピーカー台はこの高さを目安に選んでほしい。
ディスプレイの横に置く場合を考えると、SPはやはりこのサイズがベストかもしれない。大きいSPを机から離して設置すると、ディスプレイよりかなり高い位置になってしまう。
スピーカー台はテーブルにクランプ出来るものが邪魔にならないが、CS104にそのまま付く商品がない。BOSE GMA-3、ヤマハ BAS-10、 電話スタンドなどを元にDIYで作るしかなさそう。
ウーファーが机から離れればよいので、スピーカーを上下逆さにして仰角をつけ、ツイーターを耳に向ければ、レンガ2個でもレンガ3個とほぼ同等の結果を得る。
見た目に違和感がある場合はパンチングメタルを上下逆さに付け直せばよい。
CS104の音質
単体の音質
非常に明瞭な音。まるでホーンを使った高能率SRのよう。よくある民生用SPとの最大の違いは、パワーを入れても音質が崩れないこと。これはf0cが170Hzと高い設計のせいもある(振幅が抑えられる)。
問題は、出力音圧特性から伺えるように低音が不足して鑑賞に耐えないこと。大抵はこの音を聞いて「これダメだ」「使えないね」としてUターンしてしまうだろう。
サラウンドのリアとして使うなら問題ない。
サブウーファーを併用した結果
SR用スピーカーは口径に関係なく低音が出ないので、サブウーファーとセットで使う必要がある[4]。ところが、実際これをやった人をみかけない。そこで試してみた。
ヤマハNS-SW210と組み合わせたところ[3]。サブウーファーの低音も床の反射の影響を受けるので、設置に注意したい。
出力音圧特性。NS-SW210のボリウム位置は6.5。AVアンプ(ヤマハRX-S600)でドライブし、クロスオーバーを160Hzに設定。
特性は良好で、メインSPとしても十分使える。100Hzの谷はサブウーファーの置き方に起因するもの。
音の方はすごいの一言。音の粒がぶつかってくる感じ。とてもソフトドームから出た音とは思えない。しかも細かい音が良く分離して聞こえる。まるでヘッドホンで聞いているかのよう。
あまりにいい音なのでボリウムをあげたくなる。するとすぐにサブウーファーの音質が破綻する(歪が増えて音が汚くなる)。NS-SW210は50W( THD10%)の能力しかない。民生用なので仕方ないところ。
CS104の実力を引き出すには、耐入力の高い(大振幅でも歪少なく低音が出せる)サブウーファーが必要だ。
Classic Pro専用サブウーファー
一応、Classic ProからCS104とセットで使えるCS108SP (100Wrms)が出ている。ほかヤマハNS-SW300 (250W THD10%)がある。ホームシアターではEUROLIVE B1200D-PROが素晴らしい結果を期待できる。入力がXLRなので変換アダプターを使って接続する。
CS108SP はウーファー用のほかにも2chパワーアンプを内蔵しているので、ステレオミニプラグ-RCA変換ケーブルを使えば一つのオーディオシステムとして完結する。CS104とはスピコンで繋ぐ。
PCオーディオとして使う
PCオーディオOSのサウンドミキサーは音が悪いので、foobar(フリーの再生ソフト)にWASAPIを組み合わせて使いたい。
気になるお値段は・・
CS104は2本で約1万円(サウンドハウス)。SPEKTOR1の半分以下で買える。CS104は安いが、サブウーファーをセットすると合計金額がSPEKTOR1を超える。
音は間違いなく素晴らしい。このスピーカーを上回る民生機器は、そう多くないはずだ。
NS-SW300と組み合わせる(2018/6/8)
サブウーファー(NS-SW300)を入手したので念願の構成を試してみた。
スピーカー台はハヤミ工産NX-B300S をセレクト。上下逆さ置きでウーファーの高さが30cmくらいになる。見た目、音質共に完璧。
CS104をディスプレイの両脇に移動してサブウーファーをかなり離しても違和感がない。
サブウーファーの歪が減ったおかげで、音量をあげても音が破綻しなくなった。大音量でもクリアな音質をキープし煩く感じない。ライブ録音では、その場にいるかのような臨場感。ニアフィールドで音量をあげると、まるで大型のホーンスピーカーの中に頭を突っ込んで聞いているかのようだ。
ニアフィールドは大きなスピーカーを置けない人が、やむをえず選ぶもの・・そんな妥協は全く感じさせない。これはもう、立派なHi-Fiオーディオである。
<参考購入先>
JBL ControlX CS104とほぼ同じスペック。ホワイトがありサラウンドのサテライトに好適
CLASSIC PRO CS104
NS-SW300 CS104の能力を発揮できるサブウーファー
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