自宅にある湿度計をかき集めて並べてみた。いつまで経っても数字はバラバラ。いったいどれが本当なのか。今回は、 湿度をきわめて正確に測る方法をご紹介する。
湿度計の課題
湿度計は徐々に劣化して誤差が増える。バイメタル式は3~5年で使えなくなる使い捨て消耗品。いま使っている湿度計の表示にどの程度誤差があるのか、さっぱりわからない。
この課題は信頼できる湿度計があれば解決する。すなわち、正確な湿度がわかれば、これと比較することで誤差を把握できる。
湿度を正確に測る方法
湿度を最も正確に測れる道具の一つにアスマン通風式乾湿計がある。湿球と乾球に3~5m/sの風を当てて、得られた値を次の式1に入れて水蒸気圧を求め、式2から相対湿度を得る。
e=esw−A・p(t−tw) (1)
e: 求める水蒸気圧 (Pa)、esw : twにおける水の飽和水蒸気圧 (Pa)、A: 乾湿計係数 (K-1)=0.000662
p: 気圧 (Pa)、t: 乾球温度 (℃)、tw: 湿球温度 (℃) JIS Z 8806より
E=100・e /es (2)
E: 相対湿度(%)、es: t における水の飽和水蒸気圧 (Pa)
飽和水蒸気圧(Pa)は温度 T(K) とすると、JIS Z 8806 にある次のSON-NTAGの式で求めることが出来る。Tetensの式の方が簡単だが、エクセルなどを使えば計算の手間は問題にならないので精度の良いSON-NTAGの式を使う。
es=EXP(-6096.9385T-1+21.2409642-0.02711193T+0.00001673952T-2+2.433502LN(T)) (3)
何と面倒な・・と思うかもしれないが、数字で直読できる精度のいい湿度計、なんて都合の良いものはない。
一般に良く見かける水タンクの付いた「乾湿計」と呼ばれる商品はアスマン式を無風で使うようにした簡易版で、乾湿計係数A=0.0008 などとして事前にEを計算した数値表から湿度を求める仕組みのものが多い。Aの値は製品によってマチマチで求められる湿度も誤差が大きく目安にしかならない。
この普通の乾湿系に風を当てて測りA=0.000662 として計算すればアスマン式と同じで、一般家庭で最も信頼できる湿度の値を獲得できる。
正確な湿度を知る具体的な方法
やり方は簡単。乾湿計を扇風機の前に針金で吊り下げ、風を「中」にして数分後に湿球と乾球の温度を読む。
「中」でおおよそ3m/s前後の風速が得られる。1目盛りの1/10まで読みとって数回の平均をとり、上述した計算式に放り込む。
真ん中のバーは使わない。読み値からすぐ湿度が求められるようエクセルの計算シートを用意した。後のリンクからダウンロードできる。
写真ではタンクに水を入れているが測定時間が短いのでガーゼを水で湿らせれば十分。
この測定で精度を左右する重要なポイントは、湿球と乾球の温度計の初期値が揃っていること。もし差がある場合は、ガーゼを水で湿らせる前に、その差をできるだけ正確に読み取って計算時に補正する。
温度計の誤差(読み値と真値とのズレ)、気圧、扇風機の風速などは結果にあまり影響しない。読み(温度差)さえ正確にわかれば精度のよい測定結果が得られる。
この測定で得られた値は他の常設湿度計の校正に利用する。年に1~2回測定して劣化診断や誤差の把握に使うとよい。乾湿計は常設せず保管しておけばガーゼの消耗も含め劣化しない(液切れを防ぐため、必ず立てて保管する)。1つあれば一生使える、リファレンスになる。
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