すべての洗剤は自作できる~洗剤の選び方と使い方

 用途別にいろんな洗剤が売られている。これらのほとんどは安く自作でき、市販品と同等以上の汚れ落ちが期待できる場合がある。汚れ落ちの仕組みと、いろいろな洗剤の自作例をご紹介したい。

 

洗剤の種類

 市販の洗剤は、大抵次のどれかである。

 

界面活性剤

 特性(イオン性)によって性質に違いがある。洗浄剤には陰イオン系と非イオン系が主に使われ、手荒れが問題になりやすい台所用は中性が多く使われる。いずれも汚れに浸透して包み込み、浮きあがらせることで汚れを落とす。

 商品は、石鹸、マジックリン、キュキュット・・など非常に多い。用途別にいろんな商品があるのは、要求される濃度が用途によって違うため。ならば濃い原液を買って用途別に薄めて使えばいい。ここに自作の余地がある。

 

酸・アルカリ洗剤

酸性洗剤:塩酸(サンポール)スルファミン酸(トイレのルック)、クエン酸

アルカリ洗剤:炭酸ナトリウム、炭酸ソーダ、重曹、アルカリ電解水(激落ち君)、メタ珪酸ソーダ

 

 酸は塩酸が最も強いが、揮発した塩化水素が周りのものを腐食させるので、あまり使わない方が良い(後述)。家庭ではクエン酸が安全。

 炭酸ソーダは重曹と炭酸ナトリウムの中間物で、セスキ炭酸ソーダという名前で商品化されている。アルカリ電解水は0.2%水酸化ナトリウムの同等品とされる[Wiki]。メタ珪酸ソーダは水酸化ナトリウムの次ぐ強力な薬剤で、皮脂や油を溶かす。ガンコな油汚れに有効。

 酸とアルカリは汚れに応じて次のように使い分ける。

 アルカリ洗剤→油汚れ、皮脂
 酸性洗剤→石鹸カス、水垢、尿石

 

漂白剤

除菌漂白に利用。酸素系と塩素系がある。

 

酸素系:過炭酸ナトリウムワイドハイター

 酸素系の主成分は過酸化水素。その酸化作用で除菌漂白する。性状は粉末の過炭酸ナトリウムと液体がある。液体はオキシドールに界面活性剤を混ぜたものとほとんど同じである。

 効き目穏やかで失敗が少ない。効果は温度に比例する。お湯で使うと短時間で良く効く(10℃あがるごとに時間が半分になると考えられる)。

 

塩素系:ハイターキッチンハイター

 主成分は次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウム。

 「キッチンハイター」はハイターに界面活性剤を添加したもの。非常に強力。皮膚をはじめ有機物を溶かす。細菌の細胞を破壊するので黒カビを消滅できる。5~10倍に薄めてスプレー式ハイターの代わりに使える。

 原液の扱いは要注意。ハネた液が木綿や麻の服につくと薬焼けして台無しになる。合成繊維の服を着て保護メガネを付けて扱う。薄い溶液でも濡らしたまま放置すると塩素ガスが発生しステンレスを腐食させる。

 

溶剤

 アルコール、石油系溶剤、オレンジオイル(リモネン)

 脱脂洗浄剤。素材を侵しやすいため、素材に応じた使い分けが必要。リモネンは有機物を溶解する。床にこびりついた垢など酸やアルカリでは落としにくい汚れ落としに有効。シール剥がしとしても知られる。

 

 脱脂の強さは概ね次の順番になる。

アセトン>ラッカー薄め液>ペイント薄め液(灯油)>イソプロピルアルコール>エタノール

 揮発性の弱いペイント薄め液(灯油)はシールやテープなどを剥がすのに有効。除草にも使え、当サイトで過去に紹介してきた。金属など硬いものは灯油と超音波洗浄の組み合わで非常に綺麗になる。

 

 

自作に向かない洗剤

 洗濯用の洗剤は経済性と洗浄効果を追求した高性能洗剤。少量で高い効果を発揮させるために漂白剤や酵素が配合されている。ここを自作で代替するメリットはない。素直に市販品を買うのがよい[5]

 

 

自作のベースになる洗剤

 洗剤自作する場合はベースになる界面活性剤が必要。これには余計な添加物の入っていない原液が求められる。水玉になって弾いてしまう自作洗剤と混ぜることで、効果を倍増できる。

 そんな界面活性剤の一つにゲイロードのフォーミュラG-510がある。水で薄めて使うだけでなく、水玉になって弾いてしまう酸やアルカリの自作洗剤と混ぜることで効果を倍増できる。

 

ゲイロード フォーミュラ G-510 G-510原液1Lボトル。色は茶褐色。匂いはあまりしない。希釈倍率は買うと付いてくる取説を参照。概ね、ガラス:100倍、住まい一般:40倍、洗浄:20倍、油汚れ:10倍が目安。

 1Lボトルを10倍希釈すると約220円/Lなので、10倍以上薄めて使えば市販の洗剤より安い。後述するように10倍希釈液を沢山作っておくと便利。

 

 

自作洗剤のレシピ

 住まいの洗剤は以下のものでほとんどをカバーできる。

 

一般洗浄(万能)

 水400cc+ G-510 20cc

 

家具、電化製品(拭き取り不要)

 水400cc+ G-510 10cc

 

トイレの床、便器の掃除、アルカリの中和

 クエン酸水:水400cc+クエン酸20g+G-510 5cc+消毒用アルコール20cc

 クエン酸には優れた消臭効果があり[6]、普段からこれを使うことでトイレの臭いはほとんどしなくなる。便器には市販の塩酸入り洗剤(サンポール、トイレルックなど)を使います。

 

一般洗浄で取れない汚れ、浴槽、酸の中和

 アルカリ水:水400cc+セセスキ炭酸ソーダ20g+G-510 5cc

 

屋外、クルマの高圧洗浄

 ケルヒャーフォームノズルに:G-510の原液入れて2倍に薄めます[4]

 

金属の油汚れ、台所コンロ周りの油汚れ

 メタ珪酸ソーダ、灯油(ペイント薄め液)を使って溶かす。ラッカー薄め液はより強力だが、樹脂を腐食するので注意。

 

除菌(塩素系)

 G-510 20倍水溶液:ハイター=5:1くらいの混合比で使う。泡ハイタースプレー容器が無くなったらこれに詰め替えて使っていく。ハイターは業務用5kgが経済的。

 

コンタクトレンズ

 関連記事2,3参照

 

 

保存の注意

 クエン酸の水溶液は常温でカビてしまう。この問題は普段冷蔵庫にいれておくか、消毒用アルコールをレシピのように5%程度混ぜておくことで防げる。

 

 

洗剤の容器と運用方法

 G-510は10倍希釈液を2L程度のタンクに用意し、それをスプレーボトルに入れて用途別に希釈します。

 酸アルカリはオール樹脂製のスプレーボトルに作り置きし、赤、青などの印をつけておきます。

 

いろいろな洗剤を入れて準備したスプレーボトル 準備したいろいろな自作洗剤の例。

 スプレーボトルは耐久性に差があり見た目ではわかりません。今まで買ってきた中で長く使える商品は次の2つのみ。

 角型スプレーボトル

 丸型スプレーボトル

 

 

 

中和洗浄の必要性

 強い酸やアルカリ(塩酸、水酸化ナトリウムの入ったハイターなど)を使った場合、中和洗浄しないと周辺のものを腐食させることがある。

 塩酸を付けたトイレブラシを水ですすいだだけで収納庫に放り込むと、収納扉のヒンジを腐食させる。

 金属製の排水口にハイターを付けたまま放置すると、排水のメッキを腐食させてしまうことがある。

 塩酸にはセスキ炭酸ソーダ、ハイターにはクエン酸が中和に使える。ハイターが手に付くと皮膚の表面が溶けてヌルヌルするが、クエン酸で洗うとそれがスッキリとれる。

 塩素系の洗剤は殺菌に便利だが、水筒などのボトルに使うと水ですすいでも残留しており味がおかしい場合がある。ここもクエン酸水溶液の中和洗浄が有効。

 

 

実例

亜鉛メッキ塗装した水栓の先端部 週に一度、水道の蛇口にクエン酸水をスプレーして放置するとカルシウムが付かずいつも綺麗に保てます。緑青の発生防止に亜鉛入り塗料が有効。

 

G-510でピカピカに拭き上げた鏡の表面(2016/12/10追記) G-510は汚れ落ちがいいうえ、拭き取った後が非常に綺麗です。左の写真は20倍希釈液で拭いた洗面所のガラス。

 

 

 

<参考購入先>
G-510 希釈して使う万能洗剤。原液を買ってください
クエン酸 大袋がお得です
酸素系漂白剤 とても便利に使える漂白剤。私はDCMブランドの一袋80円くらいの商品を使っています
角型スプレーボトル
丸型スプレーボトル

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<参考資料>
石鹸百科