冷蔵庫というモノは、徐々に調子悪くなって故障という経緯をたどらない。ある日突然冷えなる。この予期せぬ出来事に慌てふためく。今回は、壊れた時の対処と、選び方のコツ、長年使ってきた実績から長持ちの秘訣をご紹介する。
写真は三菱のMR-M37S-M。1998年に購入し、2021年に故障したので23年使ってきた。
「昔の冷蔵庫は消費電力が高いから買い替えたほうがお得ですよ」
と言われることがある。23年買い換えなかった私は損をしたのだろうか。今回はこの疑問もクリアにして、買い替えのベストなタイミングを提案する。
とりあえず試すこと
製氷室の氷が解けている!庫内が冷えてない!そんな時は、冷蔵庫をコンセントから抜いて、2時間くらい後に入れなおす(水受けのトレイが溢れないよう注意)。霜が原因ならこれで治る。
これで復活しても、また冷えなくなる可能性が高い。同じことになる場合は修理を呼ぶ。修理か買い替えの判断は、使ってきた年数で決める。詳しくは後述。
冷蔵庫はすぐにやってこない、いったいどうしたら・・
故障は突然やってくる。困った、すぐに入れ替えを・・と思っても、すぐにはやってこない。家電量販店で2~3日、ネット通販では7日くらいかかるのが普通だ。そして家電量販店はネット通販より3~4万円高いのが普通。
このとき「冷蔵庫の中がダメになるから、少しでも早く!」と妻は訴えるだろう。そこで家電量販店に急ぐのは、ダメな夫だ。冷蔵庫の中身に3万円以上の価値があるなら家電量販店もいいが、大抵は中身の方がはるかに安い。「冷蔵庫の中がダメになるから早く!」主婦は物事を感情的に考える。ここは男の合理的な判断でカバーしてあげてほしい。
いくら「早く」といっても明日にはやってこないし、冷凍食材は3日もたない。どのみちダメになる冷蔵庫の中身はあきらめて、外食やコンビニ、インスタント食材でカバーすることを考えたい。この機会に、冷蔵庫無しの生活を体験してみるのもよい。家から出るゴミの量の変化に驚くはず。
ちなみに、壊れる前に買い替えておけばこいういう問題が起こらないが、いざ冷蔵庫の値段を見ると、まだ使えるものを捨てるのが勿体なく思えてくる。ここをどう考えるか。以下詳しく説明する。
消費電力が高いから買い替えたほうがお得?
家電の寿命は10年といわれる。実は10年目に買い替えを検討したことがある。その時店員さんから「昔の冷蔵庫は消費電力が高いから買い替えたほうがお得ですよ」といわれたことがある。
試しに、23年前の冷蔵庫と、今の冷蔵庫の電気料金の差額を計算したら、年間1.4万円違う。「これは大きい!」と、思うのは早計。冷蔵庫を買い替えたらそれにお金がかかることを計算に入れないといけない。
400Lを超える冷蔵庫は16万円くらいする。16万円出して10年もつ冷蔵庫に買い替えると年間1.6万円の償却が始まるから、10年過ぎたあとは1.4万円電気代を余分に払って今のを使い続けたほうが安い。10年過ぎていない場合は償却が済んでいないから、その分が丸損になる。したがって表題の結論は、消費電力が少々悪くても、使えるものは使い続けたほうがトクである。
10年過ぎて壊れたら
修理してもらおうとサービスを呼んで、結局買い替えることになると、サービスを待った時間が無駄になる。「最初に買っていれば今頃冷蔵庫が届いていたのに・・」そう後悔するだろう。1日でも早く復旧させたい時、買い替えか、サービスを呼ぶかの判断はとても重要だ。これは次のように考える。
家電は年間1万円の償却で考える。例えば16万円で買った冷蔵庫なら、16年使うことを目標にする。これが10年で壊れたと仮定しよう。最初に紹介したコンセントの抜き差しで回復しない場合、コンプレッサーなどの主要部品が壊れていて6~10万かかる可能性が高い[5]。
この場合、10年過ぎたものに修理代6万払って16年目に買い替えるのと、今買い替えることは同じ。しかも部品がない場合もある。従って、10年過ぎて冷えなくなったら、サービスを呼ぶことを考えずに買い替えに走るのが正しい。
ところで、16万円出して買った冷蔵庫が10年で壊れた場合、選択を間違った可能性がある。つまり、本来使えたはずの残り6年(6万円)を、あなたは損した。同じメーカーの冷蔵庫を買ったら、また同じ目に遭うかもしれない。今度買う冷蔵庫はメーカーから選ぶ直すことも考えたい。
新しい冷蔵庫の選び方
いくらくらいが妥当か
家電は年間1万円で償却していくのが一つの考え[1]。内閣府の調査によると、一般家庭の冷蔵庫の平均使用年数は10~12年[4]。これは交換部品が無くなることも関係している。そこで、後述する長持ちさせる工夫をして16年を目標としたい。すると、16万円が一つの目安になる。高くても20万円まで。
リプレースに向けた計画を立てる
冷蔵庫が壊れると突然の高額出費に嘆くかもしれない。いつまで使うつもりでいたのか、何も考えてないとこういうことになる。
16年目の買い替えに向けて予算を確保し、候補を事前に検討しておく。予定通り壊れたら、カートに入れてポチる。これで、「突然のトラブルで想定外の出費」が、「予定通りの結果と予算の消化」に変わる。高額商品の買い替えは、このように計画的に行いたい。
延長保証は必要ない
冷蔵庫が壊れた、延長保証を付けたのを思い出して調べたら、半年前に切れていた・・これは良くある話。冷蔵庫の長期保証を見ると10年がある。保証会社が損になる設定はありえないから、10年までは壊れる可能性が低く、無駄になる可能性が高いということ[3]。
それに、冷媒回路(圧縮機、冷却器、蒸発板、冷却循環用ファン、ファンモーター)など壊れると致命傷になる主要部は、メーカー標準で5年保証が付いていることが多い。つまり、延長保証は要らない保証である。
あると便利な機能
冷蔵庫を買おうと店頭に行くと、どれも同じに見える。今や消費電力にもほとんど差はない。選ぶポイントは次の2点。
①奥行き650
重要なのは幅ではなく奥行き。400Lを超える冷蔵庫の奥行きは700前後が多いが、一般的な住宅の間取りにそぐわない。どこに置いても出っ張って邪魔になる。奥行き650。これはとても重要なスペックである[2]。
幅に関しては、放熱のため両側に最低5cm必要。隅にぴったり寄せて置いてしまうと熱がこもり寿命を短くする。冷蔵庫は置ければよいというものではない。
②真ん中野菜室
三菱の冷蔵庫を23年使ってきて思った一番のメリットは「真ん中野菜室」。これがどうしようもなく便利だった。
自分で調理をするようになってから思ったこと。それは、野菜室は真ん中に限る、だ。あとのことはどうでもいい。ここに冷凍庫がある理由は、「冷凍食材を沢山入れたい」「冷凍庫が最も頻度が高い」とかいう調査結果によるものらしい。冷凍食材は子供のお弁当が必要な時多くなるが、それが16年続くのか、よく考えたい。
ちなみに、写真の冷蔵庫は氷ストッカーが野菜室の左上にある。水筒をストッカーの近くにもっていき、氷を入れる。これがちょうど手元でできて、どうしようもなく使いやすかった。
奥行き650で、真ん中野菜室。この2つの条件を満たす商品が長いこと市場に無かった。これが長年買い替えなかった(実はできなかった)大きな理由。
お勧めの冷蔵庫
’21現在、奥行き650で、真ん中野菜室で、20万円を切る商品は、東芝と三菱にある。本当はパナソニックが欲しかったが残念ながら候補はなかった。
どっちも460Lだが、家族4人までならこの容量で十分。「大は小を兼ねる」とか言ってバカでかい冷蔵庫を買い、大量の食材を詰め込むのではなく、無駄なものを減らし限られたスペースを効率よく使う工夫をしたい。このことは、電気代から食費の支出、ゴミの量にまで影響する重要なことだ。
ちなみに、私は今までと同じ引き出しレイアウトの三菱を選んだ。前の冷蔵庫は16万円出して23年使えたから、浮気せず同じメーカーの同等品を買うのが正しい行動と信じる。
セカンド冷蔵庫を持つ
実はうちにはもう一つ冷蔵庫がある。46Lの小型で、普段は実験に使う溶液や微生物の保存に使っている。これが緊急用に役立った。家族が多い場合は、バカでかい冷蔵庫1台買って何もかも詰め込む、ではなく、メインとサブ2台に分けて使うことも選択肢の一つとして考えたい。
なお、安価な小型冷蔵庫も捨てるときリサイクルにお金がかかる(7~8千円)。選択は慎重に。
やってきた冷蔵庫
三菱MR-MX46G。ネットでポチって6日目に到着。早速いろんな問題が。
麦茶ポットが入らない
新しい冷蔵庫は観音開き。右のドアポケットに麦茶ポットと牛乳(紙パック)を並べて入れてドアを閉めたら、全部閉まらない。ハテ?と思って原因を調べると、ポットの取っ手が壁に当たっている。当たらないよう寄せると、紙パックが入らない。観音開きのポケットは横幅が狭いので幅方向に融通が利かない。これは使ってみて解る盲点。
それに、この製品のポケットの幅は底で80mmしかない。多くのポットの底は85mmくらいあるので、無理に差し込むと破損する。
写真は問題の隙間。入口85mm、底80mmなので、底85mmのポットを差し込んで底まで押し込むと「バキ!」といく。家族にルールの徹底は難しく、壊れるとイヤなので、底が80mmの小型のポットに買い直した。
麦茶ポットは左の扉にも入るが、開閉するたびにポットの取っ手が反対の扉と当たる。観音開きに入れる麦茶ポットは、寸法に注意が必要。
磁石が付かない扉の改善
鉄の扉は掲示板として有用だった。ところが最近はガラス張りになって磁石が付かない。この問題は、マグネット吸着用のスチールプレートと、マグネットピンで対処できる。くっつきが弱い場合はプレートを2枚重ねにするといい。現在、買い物に行ったらそのレシートを張り付けて、次の買い物のメモに使っている。
長持ちさせるコツ
特にメンテする所がなさそうな冷蔵庫だが、23年使ってきて気づいたポイントは2つ。
①放熱スペースをしっかりとる
機器の寿命は温度が最も影響する。周囲のスペースは、広ければ広いほど良い。説明書に周囲何センチとれとか書いてあるので、それを必ず確保する。全周5cmなことが多いが、実は後ろが一番重要。しっかり確保しないと温度があがって寿命が短くなる。
冷蔵庫の上に神様がいる場合は、天板を触ってみて熱くならないエリアに置く。
②ドアパッキンの予備を買っておく
冷蔵庫のドアパッキンは消耗品。特に冷凍室の周りが傷みやすい。劣化すると弾性がなくなって脆くなる。写真は23年使ってきたパッキン。黒カビは隙間がある証拠。交換しようと部品を探したがなかった(あたりまえ・・)。
冷蔵庫を16年持たせるためには、1回パッキン交換をした方が良い。劣化したものを使い続けられないことはないが、冷気が漏れるなどして電気代が余分にかかる。全部ではなく、劣化した部分だけでよい。
パッキンは製造終了後7年しか保有しないので、部品が無くなる前にパッキンだけ買って持っておくといい。モノはメーカーに問い合わせて取り寄せるか、楽天などのネット通販を利用する。値段はネット通販の方が安い場合が多い。一覧にない場合は出品者に問い合わせるといい。
交換は引っ張って外し、新しいパッキンを嵌めるだけなので、素人でも簡単にできる。
③引き出しのローラーをグリスアップ
野菜室と冷凍庫のローラをグリスアップしておく。何もしなくても滅多に壊れないが、重いものを入れる引き出しは摺動部が摩耗して動きが悪くなる。グリスアップすると、最後まで快適に使える。
<参考購入先>
奥行き650で、真ん中野菜室の冷蔵庫を黙って買うのだ
VEGETA GR-T460FH
MR-MX46G
扉の活用はこちら
スチールプレート
マグネットピン
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<参考文献>
4.e-stat 主要耐久消費財の買い替え状況の推移
5.三菱冷蔵庫修理代の目安