ベッドの選び方~激安通販の落とし穴 ベッドの強度はモノサシ1本でわかる!

 売上No1!満足度No1!そしてお値段はたったの・・19,800円!!口コミを見れば、喜びのお便りで埋まっている。「うわ、これいい!これにしよ。」ポチ。

 そして自宅に届いたベッド。説明書を見ながら自分で組立る。ねじが合わない、うまく入らない、締めるとパイプがどんどん潰れていく・・それでも、お父さんに手伝ってもらってなんとか組み上げる。「やった!完成!!」

 そして1カ月後。「なんかキシキシいう」「グラグラする」「マットが潰れてきて痛い・・」

 半年後、フレームの溶接が取れてしまう。「これ修理できないよね・・」ゴミとして破棄。

 大抵の消費者は見た目と値段でベッドを選び、構造や強度のことに目が届かない。通販の安い組立式家具は販売業者が組立をせず、耐久性や問題など検証してないものがほとんど。なので実際に組立てたり、使ってみると、様々な問題が出てくる。

 今回は、ベッドを選ぶ際の見落としがちなことや、注意点をご紹介したい。価格帯は、最もよく売れている10万円未満の商品を対象とする。

 

ベッドの材質は何がいいのか

 大きく分けてMDF、スチール、天然木がある。

 MDFは木片を樹脂で固めたもの。寸法精度が高く安価なため広く使われている。MDFの欠点は強度の高い締結が難しいこと、クリープすること。これはベッドに限らず組立家具に共通する。

 クリープとは、荷重をかけ続けると次第に曲がってしまい、元に戻らなくなることをいう。安い本棚の棚板によくみられる[6]

 MDFの表面仕上げはプリント化粧紙、突板、塩ビシート、メラミンなどいろいろある。ベッドでは傷や水に対する耐久性を気にしなくてよいので、どれを選んでも問題ない。

 スチールの強度は木材に比べて高いが、重量を軽くするため薄肉のパイプが使われることが多い。そのため木材より必ずしも頑丈とはいえない。スチールの商品を選ぶ際は、この肉厚に注意する(後述)。

 天然木はパイン、ヒノキ、ラバーウッド(集成材)などが使われている。天然木のベッドは魅力的だが、クリア塗装の商品が多くインテリアとのマッチングが難しい。パインは節の個性が強いうえ、色が次第にアメ色(褐色)に変わっていく。

 

何色がいいのか

 木製のベッドは存在感が大きいため、インテリアとのマッチングに注意する。基本的に寝室にはダークブラウン、個室では床に合わせる。

 背の高いロフトベッドの場合は壁の色に合わせてもよいので、壁紙の色(白に近いベージュ)も候補になる。

 骨組みの細いスチールベッドは存在感が小さいので、ブラウン、シルバー、黒から選べば大抵問題ない。

 

ベッドの強度はモノサシ1つでわかる

 ベッドの強度は、乗ったときのたわみでわかる。ここは基本的に、側板の「高さ」と、足の本数に関係している。

 4本足より6本足、MDFの場合は、床まで達する側板が「三」または「田」の字になったものがよい。

 4本足や6本足の強度は、モノサシ1つで確認できる。ベッドを見に行くとき必ず持参したい。真ん中の端に腰かけたとき、お尻の下のたわみ(床からの高さの低下)が5mm以下であればひとまず合格といえる(木製、鉄で共通)。

※:体重60kg、木材のヤング率 9MPa、木材の長期許容応力 10Mpa(鉄は160Mpa)[1][2]として安全率を1.3みたときの許容たわみ。

 

組立式のデメリット

 組立式は安く導入でき、子供の成長や進学に合わせてベッドを部屋から部屋へ、部屋から別の場所(下宿先など)へ容易に移動できる。

 ところが、完成品の強度が弱い。最大の弱点は結合部。最近の組立式家具は、ドライバーで回すだけのカムロックや、締めるほどに潰れていく薄肉パイプが使われている。そのため、組立式はバラバラにならない程度にくっつくけただけと考えたい。強度は無いに等しく、振動や繰り返しの力で簡単に緩んでしまう。

 通販では締結部の構造やパイプ肉厚など事前にわからない場合が多い。スチールに限らず木製でも製品重量を見て出来る限り重いものを選ぶことがポイントになる。メーカーは国内製がよく、製造元のはっきりしない激安商品は避ける。

 

引き出しは要るのか

 ベッド下の引き出しは収納に便利そうだが、奥行きが少なく(通常ベッド幅の半分以下)、高さもないので収納量は小さい。ベッドの下は引き出しではなく空間になっているほうが奥まで最大限使える。下が空間のベッドを買って、そこにベッド下用の収納ボックスを入れるのがベストである。

 

宮棚はぜひ欲しい

 その他、宮棚(頭付近のちょっとした置台)は目覚まし時計やケータイなどを置くのに便利。コンセントも便利な装備だ。

 

マットレスは何がいいのか

 厚み15cm~20cm、金属のポケットコイルを並べたものがよい。体の凹凸に合わせて変形するので体圧が均一に分散しやすい。
 突起をたくさん並べた形のウレタンマットレス(西川のムアツなど)も同じ特性を持つが、ウレタンは劣化やヘタリが問題になりやすい材料なので注意が必要。

ムアツ布団のウレタン突起部の形状 2000年頃の商品 写真は我が家にある西川のムアツ布団(当時購入価格8万円)。突起の形状は独特で底面にも切れ込みがある。

 このマットを買うとき「単なるウレタンが何で8万!?」と思ったが、13年すぎた今も劣化やヘタリもなく問題なく使えている。季節を問わず快適。突起が体の凹凸にあわせて凹み、体圧が分散するためと見られる。

 

 

 マットレスを沈めて使う箱型タイプのベッドでは、マットレスを敷かずカラーボールを充填してボールプールにする手がある[3]

 

実例

組立式ベッドの宮棚 ラテ エスプレッソ S  今回購入した組立式ベッド。 ラテ  エスプレッソ S (販売元:㈱ビッグスリー) 。ほとんどのパーツ表面がメラミン化粧仕上げされている珍しい商品。パーツはMDFだが部品にソリもなく仕上げ加工精度ともに高い。

 写真の宮棚は目覚まし時計や小物を置く便利なスペース。手前の板を上下反転して箱状に組んでみた。宮棚からモノが落ちなくなって使いやすい。

 

宮部と本体の結合部 ラテ エスプレッソ S  宮部とフレーム本体の最も荷重のかかる重要な結合部。金属金具を使うのはいいが、なんと両方バカ穴の突合せ。

 ダボも目印もないため位置が決まらないうえ、荷重をネジ頭のせん断摩擦で保持するダメな設計。

 

格子構造のベッドフレーム ラテ エスプレッソ S  ベッドフレームは田の字の格子構造(クロスフレームというらしい)。ここはいいのだが、全部バラバラ部品の繋ぎ合わせなので、直角定規水準器がないと組立後の直角平面が出ない。

 上板はリブ3本入ったペナペナの板切れ。寝返りをうつたびにフレームとスレてキシキシいう。

 収納の引出しはだけは妙に頑丈。底板に補強リブがあって重いものを入れられる。

組立式ベッドは買って組立ればおしまい、ではなく、DIYの余地がある商品と考えたい。

 

組立式の強度不足をDIYで改善する

 カムロックで結合する面に木工用ボンドを塗ってしまう。この場合のカムロックの役目は、木工用ボンドが乾くまでの「仮止め」。これで市販品と変わらない強度を得る[4]

 昔は木工用ボンド併用ビス止めが多かったが、ビス止めに力が必要で組立が難しかった。近年カムロックが増えたのは、このような問題を改善し誰でも組立を容易にする意図と思われる。

 道具はドライバー1本では足りない。直角定規水準器などの道具を揃えたい。それが面倒に思う人は、完成品を買うのが無難。

※木ねじの締め付けが硬い時、固形石鹸を塗るテクニックが知られている。

 

<参考購入先>
ベッドフレーム
ポケットコイルのマットレス
西川のムアツ寝具

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<参考文献>
1.針葉樹構造用製材の許容応力
2.鉄骨関係許容応力度(リンク切れ)

<メーカーサイト>
ニトリネット
イケア
フランスベッド
山善
無印良品