木部の仕上げに自然塗料を塗ることを「オイルフィニッシュ」と呼ぶ。耐水性が弱く、普段水のかかる水回りのカウンターやダイニングテーブルに適さなかった。ところが、あるものを併用するだけで耐水性抜群の被膜を作れることがわかった。
自然塗料の特徴
自然塗料の主原料はアマニオイルなどの「乾性油」で、古くから油絵具のベースオイルとして使われてきた。
乾性油は酸素と反応して硬化する。これによってできた被膜は緻密で水や酸素を通さず、溶剤にも溶けない。但し柔らかく弾性があるため、傷つきやすく摩耗しやすい。施工方法は、これを木に染み込ませて拭き取るだけ。簡単に施工できる利点がある。
写真はアマニオイルにシッカチーフ(硬化促進剤)を混ぜて作った硬化物。このような破片を作るといろんな実験ができ物性の理解に役立つ。
オイルフィニッシュは水に弱い
木に自然塗料を塗って染み込ませたオイルフィニッシュの表面は水をはじくことから、多少の耐水、耐汚染性がある。しかし塗料は木の目地や導管に染み込んでしまい、木肌は基本的に裸(無塗装)と変わらない。そのため長時間水があると水が木の中に入り込んでふやけてしまう。
この問題は、何度重ね塗りしてもあまり改善しない。特にナラやタモなど導管が発達した木材の場合、塗り重ねてもなかなか防水できる被膜は作れない。
との粉を併用して水に弱い欠点を克服する
一般的な木部塗装では塗料が木肌に染み込むのを防ぐため「との粉」を使って目止めすることが多い。
ところがオイルフィニッシュでとの粉を使った例を見ない。オイルフィニッシュは「染み込ませる」仕上げだから、との粉でその染み込みを防ぐという考えは通常出てこない。
との粉でオイルフィニッシュは、おそらく誰もやったことがない施工法だと思う。
との粉を使ったオイルフィニッシュは、できないのか。うまくいけばナラやタモでも完全な防水皮膜ができるのではないか。物は試し、やってみることにした。
との粉でオイルフィニッシュの施工例
水回りのカウンター
写真はタモのカウンターをとの粉処理している様子。ペーパーをかけ、との粉を塗布。
乾いたら上から自然塗料(カルデット オーク)を塗りこむ。スリ込むように塗って着色し、15分程度養生してからふき取る。下塗りが乾燥したらエシャ クラフトオイルで仕上げ塗りした。
下の写真はその結果。ツヤのある仕上がりはウレタン塗装に近い。木工塗装では余分なとの粉をペーパーで削り取るが、との粉を残したまま(左の写真の状態で)塗りこむと、との粉を塗らない仕上に近い「ツヤ消し」になる。
防水性について、予測通り十分満足いく結果が得られた。
これまでどうしても改善できなかった太い導管が集まる部分(写真中央部)に水が浸透しなくなった。
一度との粉で目止めしておくと塗り重ねでどんどん皮膜を厚く出来る。
それと、との粉が塗料の浸透を防ぐため、塗料の消費も大幅に少なくなった。
竹製のしゃもじ
写真は無塗装のしゃもじ(竹製)をとの粉で処理している様子。ペースト状にしたとの粉をべたべた塗る。
との粉が乾いたら拭き取らずにそのままオイルを塗りこむ。
との粉はオイルを含むと見えなくなり、導管を埋めた部分は色濃く染まり、しかもつや消しに仕上がるので、見た目は従来のオイルフィニッシュとあまり変わらない。しかも塗装に必要な塗料は大幅に減っている。
耐水性もよく、毎日食洗機に放り込んで洗っている。
ナラの床板(2016/12追記)
水で溶いたとの粉を塗り乾かしたのち、との粉を拭き取らずにカルデッド オークで上塗り。つや消しになっていい感じ。塗料が無駄に染み込まないので経済的。耐水性、耐汚染性は以前と比較にならないほど良い。
無垢の床板は事前にペーパーがけして下地調整した方が良い。広い面のペーパーがけは大変なので電動工具を使う。写真のマキタの防塵ミニサンダが使いやすかった。
コルクのジョイントマット (2018/11/4追記)
コルクの貼られたジョイントマットに施工。
カーペットは次第に汚れて不衛生になる。洗えないので破棄。このパターンから抜けるため、コルクのジョイントマットを導入した。
写真はタンスのゲン(45cm)の商品。との粉を塗り、乾いた上にエシャ クラフトオイルを塗布する。
中心から外側に向けて、コルク表面だけ塗料が付くよう薄く丁寧に塗り伸ばすのがコツ。ベースのスポンジ板に塗料が付くと、コルクの接着が溶けて剥がれてしまうので注意。
1cm厚と2cm厚の商品があるが、カーペットの代わりにする場合1cm厚お勧め。2cm厚のものは段差でつまづきやすく危険である。
<参考購入先>
との粉 白が万能に使えてお勧めです
カルデット オーク 下塗りに使える万能塗料です
エシャ クラフトオイル 水周りの耐水仕上げ欠かせない塗料です
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