洗剤を見直すきっかけに皮膚疾患がある。解析サイトを見て、レビューを読んで「これなら間違いない!」と思って買っても今までと大差なかったりする。ニキビを無くそうと朝晩一生懸命洗顔しても、なかなか無くならない。いったいなぜだろう。
洗剤を買い替えても変わらないのはなぜか
洗剤を買い替えても結果に大差ない、ということは、洗剤に含まれる成分そのものは、皮膚疾患にあまり関係ないのかもしれない。洗剤を買い替えても結果に大差ない、ということは共通して含まれる成分に、原因がある可能性が高い。
その共通する成分の一つに「増粘剤」がある。増粘剤というのは、ネットリした液体にするためのもの。これはほとんどすべての洗剤に含まれている。
洗剤の成分と経皮毒
洗剤に含まれる成分はいろいろあるが、どれも元はサラサラの液体。界面活性剤は多少刺激があるが、すぐにすすいでしまえば問題ない。増粘剤は皮膚に残っても無害なものが選ばれている。つまり洗剤は、成分を単独でみると、基本的に無害なもので構成されている。
一方で「経皮毒」という害が知られている。これは、界面活性剤などが皮膚から血液に入り込むことで起こるという。
私の経験では、高濃度の界面活性剤を使って洗浄の実験をしていると、体かゆみを生じたり、湿疹が出たり、軽い吐き気がするなどの症状がでる。世間では経皮毒について賛否あるが、私はこのような実体験から疑う余地がない。
増粘剤の害
成分単独では無害なのに、洗剤では害になる。この謎は「すすぎ」に関係がある。通常、洗剤を使った後すすぐが、泡が見えなくなった時点で「すすぎ完了」ではない。増粘剤と一緒に洗剤が皮膚に残ってしまう。するとどうなるか。
界面活性剤が皮膚に刺激を与え続け、皮膚疾患の原因になったり、皮膚の中に浸透して血液に入り込んで湿疹やかゆみが起こる可能性がある。
「よくすすげばよいのでは?」
そう思うかもしれないが、台所用洗剤で手を洗ったときのことを思い出してほしい。ヌルヌルした感触を完全に無くそうとすれば、大量の水で長時間すすがないといけない。なので、大抵は中途半端なすすぎでOKにしてしまう。
このように界面活性剤がすすぎきれずに皮膚に残ってしまうは、増粘剤のせい。つまり経皮毒は、界面活性剤と増粘剤が合わさって起こる問題と考えられる。
いくら洗ってもニキビが減らないのはなぜか
増粘剤の弊害は他にもある。粘性が高くなって洗剤が毛穴の奥まで入らないこと。ネットリしたものが細い隙間に入りにくいことは容易に想像できる。
増粘剤を多く含むネットリした洗剤は、表面的な汚れしか落とせない。これが朝晩一生懸命洗顔してもニキビが減らない要因の一つに違いない。
解析サイトは参考にならない
成分を分析して、ランキングするサイトがかなりある。これらはボトルに書かれた成分をみて、成分の性質を解説しているだけ。その昔、シャンプーの「メリット」で問題を起こした買ってはいけない本に近い。
このような解析サイトに関して「成分の濃度を考えないで良い悪いの判断はできない!」という意見がある。私などは、濃度や増粘剤の作用を考えてない結果は「完全に無意味」と考える。
参考にならないランキングを参考にして現状が改善できる見込みはほとんどない。もしそんな状況になっている場合は、そこから脱却することが先決だ。
洗剤の「濃度」に注目する
「自分に肌に合う洗剤が見つからない・・」気づけばお風呂場に洗剤の山。そんなことになっていないか。
肌は「皮脂」と汗によって守られている。体に使う洗剤の理想は、大切な「皮脂」を落とさず汚れだけ落とすもの。市販の洗剤は、洗浄力が高すぎて皮脂を落としすぎてしまう。すると、何に買い替えても結果は同じ。
この場合の対策は「濃度」を薄めてみること。一度、水で半分に薄めて使ってみることをお勧めする。
肌に改善が見られるまで、さらに半分、半分・・というように薄めてみる。これ以上薄めたら汚れが落ちない、つまり「洗剤として使い物にならない」ところまで薄めてしまってかまわない。
肌が調子悪いと思ったら、洗剤を変えるのではなく、まずは自分の肌に合った「濃度」を見つけることが先決。濃度が決まってからはじめて、含まれる「成分」の問題になる。
必要な洗浄力は季節や年齢によって違う
皮脂の分泌が盛んな夏と、皮脂が少なく乾燥が問題になる冬とでは、洗剤に求められる洗浄力が違うことが想像つく。季節に応じて洗浄力の違う洗剤を使い分けるのが本当だ。
夏も冬も関係なしに強い洗浄力で皮脂を抜き取る。これを繰り返していれば、髪や肌は痛む一方になる。
自分に合った洗剤の濃度は、年齢によっても違う。若いころ使っていた洗剤は、歳を取ると使えなくなることは容易に想像つく。
皮脂の取りすぎはクエン酸でわかる
体臭の防止にクエン酸が有効なことを紹介した[3]。皮脂を取りすぎて皮膚が傷んでいると、このスプレーをしたときそこが沁みる。簡単に皮膚の状態をチェックできるので、ぜひ試してほしい。
洗剤を薄めると使用感が落ちる
薄めた洗剤はサラサラ。手に取ると、こぼれ落ちてしまう。自分の肌に合った濃度が見つかっても、使用感に問題があって「使えないね」となってしまうことが多い。
この問題は、次のようにすればすべて解決する。
すべての洗剤を自作品で代替する
自分の肌と年齢に合った洗浄力をもち、かつ使用感に優れた洗剤は、自作することで手に入る。
界面活性剤はG-510を使う。G-510は非イオン系界面活性剤。製造元は米GAYLOAD[5]。国内のいろんな業者が輸入販売している。濃い原液で入手でき、余計な添加剤を含まないことから、うたい文句通り、いろんな用途に使える。当館では、これまで家中の洗剤のほとんどをG-510に置き換えてきた[2][3]。
資料はG-510の希釈率。10倍~20倍が多い。
価格は1.7円/ml(1ガロン購入時)。多くの用途でコストメリットがあるが、洗濯への応用は1回20ml(30円)かかり市販の洗濯洗剤の方が安い。
G-510を使った全身ソープのレシピ
全身用500mlボディソープのレシピ(’18/12/16更新)
夏用:水460ml、G-510(30ml)、グリセリン20g、アルギン酸ナトリウム3g
冬用:水460ml、G-510(10ml)、グリセリン30g、アルギン酸ナトリウム3g
皮膚炎用:水460ml、G-510(5ml)、グリセリン30g、アルギン酸ナトリウム3g
頭も体も顔も手も、すべてこれ一つで賄える。コストは、グリセリン 1.8円/ml、アルギン酸ナトリウム 7円/g より、材料費約100円(0.20円/ml)。
G-510の希釈液は水のようにサラサラで、手やタオルに乗せると流れ落ちてしまう。そこで増粘剤としてアルギン酸ナトリウム使う。この増粘剤は食品添加物として広く使われているもの。これを、手に取ると「こぼれ落ちて使えない」問題が起こらないギリギリの濃度で使う。
それと、肌に使うものには保湿成分が欠かせない。そこで、グリセリンを加えた。
創造の館レシピで作った全身用ボディソープ。使用感は普通のボディソープとかなり違う。
ほとんど泡立たないうえ、ヌメリもない。水で洗っている感覚に近い。そのため、今までのようにナイロンタオルや、目の粗いタワシのようなもので擦ると皮膚を傷める。
タオルでゴシゴシ、ではなく、手のひらで体を優しく擦ることをお勧めしたい。肌の調子が悪い場合は、洗剤の使用を控えるか、1日置きにするなど、使用頻度を減らすといい。
アルギン酸ナトリウムをうまく溶かすコツ
アルギン酸ナトリウムをいきなり水に入れてもダマになって溶けない。まずグリセリンに分散させ、水を加えます。グリセリン無しではうまく溶けない。万一失敗しても時間がたてば溶ける。捨てずにしばらく様子をみて欲しい。
使用感
この洗剤を使うタオルは薄手の木綿か、柔らかいスポンジが適している。洗っている実感が薄いが、洗浄力は十分。手に乗せて体を適当にこするだけでも皮脂や汚れは十分落ちる。泡もヌメリもないので、すすぎが早い。
洗いあがりは「しっとり」「無臭」。今までは風呂上がりに足首のあたりがカサカサになったが、それが減った。
これを使い始めてから、お風呂場がだんだん綺麗になってきた。洗った後に残留物が残らない為とみられる。
ニキビなどの吹き出物が大幅に減った。意外だったのは、育毛が良くなり眉毛が伸びてきたこと(もしかしたら頭髪の伸びも良くなっているかも)。
これはいずれも、毛穴の汚れがしっかり落ちるようになった為とみている。
ボディリンスのレシピ
上記レシピで保湿効果を追加したい場合はボディリンスを併用する。レシピは次の通り。
水460ml、グリセリン40ml、カチセロパウダー6g
増粘剤にカチセロパウダー[4]を使うのがポイント。カチセロは肌に吸着して残るため、保湿効果が高くなるほか、髪のコンディショニングにも効果がある。
全身ソープとボディリンスの製作例。ボトルは汎用のセットボトルを使用。
カチセロパウダーは水かグリセリンに分散せたのち、ポットからお湯を注ぐことで比較的簡単に溶ける。
<参考購入先>
G-510
カチセロパウダー(ポリクオタニウム-10) 私は大阪ファッションということろで購入しました
経皮毒の参考書 結果的に「お湯で洗え」となるらしいですが、まずは増粘剤を減らしたいですね
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<参考文献>
1.長野県木曽青峰高等学校,桶野美羽ほか,手作り石けんの洗浄力(リンク切れ)
5:GAYLOAD G-510の製造元
参考:G-510の濃度を決める実験
G-510を使うためには、シャンプーやボディソープと同じ洗浄力を得る希釈率を知る必要がある。そこで、これを実験で調べてみた。上記のレシピは、この実験結果をもとに決めたものである。
実験材料
用意した実験材料は写真の通り。
ボディソープ AROMAは馬油で有名な熊野油脂製。保湿成分が透明で浴室を汚さないのが気に入っている。
比較のためメニコンO2ケアと台所用のMagicaを加えた。
実験方法
洗剤の洗浄力は表面張力と乳化作用の2つの相互作用で決まる[1]。今回、乳化作用を定量化しようと思って実験方法を検討したが、いい方法を見つけられなかった。
結局、以前やった方法、つまり洗剤を薄めながら手に塗ったサラダ油が完全に落ちる濃度を求める方法[2]が一番わかりやすかったので、今回もこの方法で評価した。
実験結果
表は×の希釈率が同じ洗浄力に相当する。×印から左へ1倍濃度になるまで同じ数ずらせば他の洗剤で同じ洗浄力が得られる希釈率がわかる。例えば、AROMA1倍(原液)は×印から×から左に5つ目なので、G-510では10倍、Luxでは4倍がそれに該当する。
各種洗剤の洗浄力テスト(水温20℃)
希釈率 | 2 | 4 | 10 | 20 | 40 | 100 | 200 | 400倍 |
G-510 (1.7円/ml) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × |
Magica (0.40円/ml) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × |
Lux (0.78円/ml) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | × | |
AROMA (1.0円/ml) |
〇 | 〇 | 〇 | △ | × | |||
O2ケア (3.0円/ml) |
〇 | △ | × |
〇:完全洗浄、×:油が残留、△は中間
今回のターゲット、シャンプー(Lux)はG-510の2倍希釈、ボディソープ(AROMA)はG-510の10倍希釈に相当することがわかった。
コストメリットが高いのがコンタクトレンズ用のO2ケア。G-510の40倍希釈液とほぼ同等なので代替すればコストはなんと1/70になる(これは以前より20倍希釈液で活用中[3])。
洗浄力=汚れを落とせる「力」ではない
実験していて気づいたことがある。表で「×」の結果も2倍の量を使えば「△」、さらに増やせば「〇」になる。要するに、汚れ落ちは含まれる界面活性剤の量で決まること。
通常、洗剤を濃くすれば、汚れを落とす力が増し、落ちない汚れが落ちるようになる・・そう考えがちだが、そうではない。洗剤を濃くするほど、落ちる汚れの「量」が増える。
なので、たいして汚れてないものに濃い濃度で使うと洗剤が無駄になる。汚れと反応しなかった界面活性剤は捨てるだけなので、汚れに応じた適切な濃度で使うことが重要になる。
肌のコンディションは人によって違う。肌に使う洗剤は、1つの銘柄に濃度の違うラインナップがあるべきだ。その中から自分の肌のコンディションや季節を考慮して選ぶ。それが体に使う洗剤の、本来あるべき商品の姿だと考えている。
<参考購入先>
G-510
カチセロパウダー
経皮毒の参考書
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