「蛍光灯をLED替えてもメリット無し」というが、実際LEDは4万時間もたず,12,000時間もつ蛍光灯が1カ月で切れることがある。これについて
「運が悪かった」「たまたまハズレを引いた」「メーカーの数字はアテにならないね」
で片付けていないか。早く切れる原因がわかれば公称寿命を超えて使うことも可能だ。
取り付ける照明器具によって違う寿命
ダウンライトの場合
我が家の照明は天井埋込形のダウンライト(パナソニック製)がメインに設置されていて全部で27台ある。すべてパルックボールがつく。この電球はスパイラル蛍光管+インバーターの構成。
写真はD25形とD15形。設置から7年、切れたのは人感センサーとセットになっている場所と、入切の激しい洗面所など計3箇所。それ以外はまだ切れていない。
長いものは8000時間に達しておりこの電球の公称寿命6000時間を越えている。蛍光灯の寿命は照度の低下で判定するようだが、実際は照度で寿命になる前に切れて交換になるケースがほとんどだと思う。
スポットライトの場合
吹き抜けに6台設置してあるスポットライト(ナショナル HEW1091E) 。ダウンライトと同じパルックボールスパイラルD25形がつくよう設計された器具だが、1ヶ月~1年の間(1500時間以内)に大半が切れる。
2台をより長寿命なパルックボールプレミアに替えてみたが結果は同じだった(2台のうちひとつはわずか1ヶ月で切れた)。写真2枚目はこのダウンライトに取り付けた蛍光灯。どれも本体が焦げていて、相当熱くなったことが伺える。他の器具でこれほど焦げ付きは見られない。
シーリングライトの場合
インバーター式のシーリングライト(写真はナショナルHHY401EP)。リング形蛍光管が2個入る。このタイプは2台あるが、あきれるほど長寿命で10年以上たった今も切れていない。
蛍光灯の発光に安定器でが入っていた時代は2~3年くらいで切れたが、インバーター式になってから熱の要因以外で自然に切れた蛍光管を見たことがない。
13年過ぎた寝室の蛍光管を外してみたところ。まだ十分明るいが電極部のプラスチックがボロボロ。
照度が落ちたり切れることがなくても、部品がボロボロになって寿命を迎える。このタイプは10年が寿命のようだ。
器具によって寿命が違うのはなぜか
以上の結果から、電球の寿命は電球だけで決まらず、取付ける照明器具に左右されることがわかる。照明器具の違いに「放熱」性能がある。
アレニウス則によると、化学反応は10℃ごとに2倍違う[Wiki]。これは寿命予測にも参考に使われている。
つまり環境温度が10℃あがるごとに、劣化に関係する化学反応速度が2倍早まって、寿命が半分になる。逆に10℃下がるごとに劣化に関係する化学反応速度が半分になる。
メーカーの公称寿命も結局は、ある環境温度における推定値。実際に電球が置かれる環境の温度が違えば、倍半分違ってくることは当然ありうるわけだ。
すると、公称寿命より短い時間で切れてしまう器具は、風通し(放熱)が悪い形になっていて、メーカーが寿命を決めた環境温度より赤い温度で動作していると考えられる。
表示寿命より長く使える器具は、大きくて放熱の良い形になっていて、メーカーが寿命を決めた環境温度より低い温度で動作していると考えられる。
上の例で、スポットライト(ナショナルHEW1091E)に付けた電球が公称寿命よりずっと短い時間で切れてしまったのは、放熱設計に問題がある為とみて間違いなさそうだ。1年以内に切れる器具が6台あると数ヶ月に1台の割合で切れていくので頻繁に切れるように感じる※。
※:このことをパナソニックのお客様相談室に言うといつも電球を無償交換してくれるが、器具については何もアクションをとらない姿勢。「未来永劫これを続けるのか?」と質問したら「LEDに替えさせていただきます」と言ってきた。
電球部門だけで問題解決しようとする姿勢には違和感を感じる。組織が縦割りで柔軟な対応ができないのかもしれない。このとき受領した電球はLDA10N-G/Z60/W。これまで設置していた蛍光灯の同等品(昼白色の100W形)が無いというので全方向のこれになってしまった。
電球の寿命を延ばす方法
電球の寿命を縮めている大きな要因は環境温度。環境温度とは、器具に取り付けたときの電球の周辺温度のこと。これを下げてやれば、寿命は確実に伸びる。メーカーが寿命を算出した環境温度※まで下げることができれば、公称値通りの寿命になるはずだ。
環境温度を下げる方策には次がある。
1.照明器具を放熱の良いものに変える
2.電球を消費電力の低いものに変える
電球が蛍光灯の場合、明るさを変えずに消費電力を下げる手段としてLED化が有効[1]。最初からLEDが付いている場合は、照明器具を変えるしかない。
※:JIS C8105-1「照明器具-第1部:安全性要求事項通則」によると、一般事務所では30℃以下とあるから、電球の寿命は30℃が基準になっているかもしれない。
実例
蛍光灯をLEDに交換すれば消費電力は半分程度に下がるから、熱で切れやすくなっている器具ではLEDに替えることで問題解決するはず。これを実際にやってみた。
1.放熱の悪いスポットライトをLED化する
パルックボールプレミアでさえ1カ月もたなかったスポットライト(ナショナル HEW1091E) をLED化する。
この器具は白熱電球が付られないようガードが付いていて電球形のLEDが付かない。何とかならないかトライしてみた。
ナショナルHEW1091Eを下から覗くとU字形のガードが見える(写真1枚目)。ここはアイリスのLED電球(LDA10N-G-V7) が擦りながらも何とか入る(写真2枚目)。この商品は径の細い放熱部が長い形をしているおかげでガードと干渉せずに設置できる。
(2015/4/7追記。問題のガードは取り外せることがわかった。写真左の下から見えるネジを外すとフードが外れ、さらに口金の土台を止めているねじ2本を外すとガードを押さえのネジに手が届く。これを半分くらい緩めればOK)
2.ダウンライトをLED化する
60形のダウンライト(写真1枚目)は深みのある形状で長尺の袋ナット(M4)がガードを兼用している。これを短いものに換えれば大抵のLED電球が付けられる。
写真2枚目はナットを短いタイプに交換してLED電球の設置に成功したところ。先のアイリス製LED(60形)もつくが値段が高いので同社の40形(LDA6N-G-V6)を設置。結果は十分明るい[1]。
LEDに替えると器具と電球の間に大きな隙間ができて天井裏から空気が流れ込む。スパイラル電球を付けても写真左のように2mm程度の隙間ができる。放熱の悪そうなカップ形のダウンライトが切れにくいのは、この隙間が冷却に役立っているのかもしれない。
40形のダウンライトは中心にあるドーム型の押出しがガードになっていて電球形のLEDはどうやっても付かない。このような場所にはT型のLEDが適合する。
LEDは熱に弱いのか
LEDは熱に弱いとする話を見かける。これは「発光素子」の話。ここは通常、適切に放熱設計されたものが商品化されている。LEDのメーカー公称寿命は素子の放熱まで含めた電球単体の値だから、素直にそれを参考にすればい。
素子は熱に弱い。だから「LED電球」も熱に弱い、という風に誤解しないよう注意してほしい。
パナソニックのLED電球が切れる(2019/7/25)
4年前、放熱の悪い照明器具(ナショナルHEW1091E)に付けたパナソニックのLED電球(LDA10N-G/Z60/W、メーカー交換品)が切れてしまった。点灯時間は約3000時間(公称寿命40000時間)。
現物を見ると写真のように一部が黄色く焦げている。やはり放熱の悪い照明器具はLEDでも持たない。しかし以前のように1カ月で切れていくということは無くなった。
この電球の消費電力は10W。同時期に同じ照明器具に付けたアイリスLDA10N-G-V7(9.6W)の方はまだ切れていない。
<参考購入先>
T型 LED ようやくスパイラルと置き換え可能なLEDが出てきました
LED電球 LED電球は国産が無難でアイリスがお勧め。放熱設計がしっかりしていて値段も安いです
スパイラル蛍光灯 取り付ける器具さえ間違わなければ十分経済的です
ローレットナット M4 ダウンライトのナットがガードになっている場合これと交換することでLED電球をつけられるようになります
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